兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

参与の読書散歩 #61

先生方に教わった本

Selected by安積秀幸参与先生

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前回は兵庫県播磨高等学校の
図書部員から紹介された本について書かせていただきました。
今回は、私が勝手に友人と思っている
すばらしい先生から紹介された本について
書いてみようと思っています。
多くの先生方がいろいろな本を読まれています。

今回の2冊は読んだ時期は少し離れているのですが、
読んでいて本当に
「人と人とのつながり」が大きく私の心に迫ってきました。





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ぼくたちに翼があったころ
タミ・シェム=トヴ 著
樋口範子 監訳(福音館書店


この本を読むきっかけになったのは、岩崎東里先生から
「この本は常森茂美先生のお薦めです。」と紹介されたことです。
常森先生は、「この続きが読みたい。」と
続巻の刊行を待っておられるそうです。

ポーランドワルシャワのクロフマルナ通92番地にあった
ヤヌシュ・コルチャック先生によって設立された「孤児たちの家」の話です。
この家は実際に設立されたもので、
素晴らしい考えのもとに運営された孤児たちの家です。

ポーランドに侵攻したナチによって、コルチャック先生は、
子どもたちとトレブリンカ強制収容所に収容されます。
列車に乗るとき、先生にだけ釈放許可証が届きますが、
その申し出を拒み子どもとちと強制収容所に旅立ちます。

主人公のヤネク・ヴォルフは盗みを常習としていた少年です。
あるとき袋叩きに遭い足を怪我してしまいます。
その後、このコルチャック先生の≪家≫に入ります。
少年はここで、ドクトルと呼ばれている先生のあたたかさにつつまれます。
母として慕っていた姉に見放されたと感じているヤネクは
その感情の中で揺れ続けます。

コルチャック先生の信念とあたたかさは、
ポーランドのナザレ校を訪問しました時
滞在中に感じたあたたかさと通じるものがあると思っています。
ポーランドでお世話になった通訳の方のお名前が
ヤヌシュさんだったことを思い出しながら読んでいきました。

この本を読み終えて、
タイトルの「ぼくたちに翼があったころ」、
僕たちがいる今はいつなのか、
また、「翼があったころ」は果たしていつなのか
考えさせられてしまいました。
常森先生と同じように続きを読めば
少しでもわかるのかなあと感じました。






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また、同じ夢を見ていた
住野よる 著 (双葉社


『君の膵臓をたべたい』を書かれた住野さんの次の本です。
岩崎東里先生にお願いして借りました。

「幸せとは?」と学校で出された課題に
小学生の小柳奈ノ花さんは一生懸命に考えます。
生意気な子どもですね、奈ノ花さんは。
しかし、奈ノ花さんの周りに登場するひとみ先生、
南さん、アバズレさん、おばあちゃん、
もちろん奈ノ花さんの両親もすばらしい人です。

読み始めた時には、「また、同じ夢をみていた」というタイトルは
なぜなのかよくわかりませんでした。

「それは絶対ダメ」と教えてくれた南さんと突然会えなくなり、
アバズレさんも同じように教えてくれたあと
奈ノ花さんの前から姿を消します。
いろいろとあたたかく教えてくれたおばあちゃんも、
友達の「ナー」と鳴く猫とともに消えてしまいます。
この小説全体が奈ノ花さんの夢だとすると、長い夢ですね。
奈ノ花さんは、夢に現れた、その時その時の未来の奈ノ花さん(?)に
いろいろと導かれて素晴らしい女性に成長します。
南さん、アバズレさん、おばあちゃんは、読んでいる私に
「未来の奈ノ花さん」であるようなないような感覚を
残してくれている構成に面白さを感じました。

同じ職業にあるひとみ先生は素晴らしい先生ですね。
できれば一緒の職場で勤務したいものです。

『君の膵臓をたべたい』の印象があまりにも強かったせいか、
帯に書かれているほどの感動は感じられませんでした。



* 「副校長の読書散歩」とは?