兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #35

湯川秀樹中谷宇吉郎
Selected by 安積秀幸副校長先生

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昨日平成26年10月7日、
突然のニュースで、中村修二教授、天野浩教授、赤崎勇教授が
青色のLED開発でノーベル賞を受賞されることを知りました。
中村教授が勤務されていました
日亜化学工業へは見学したことがありました。
LED製造ラインは企業秘密ということで
見せていただけませんでしたが、
LEDについてはいろいろと教えていただきました。
本当にうれしいニュースでした。
3人の受賞で日本のノーベル賞受賞は22人となりました。

このように1つのことを極められた方々の一言一言には
教えられることがたくさんあります。

今回は二人の科学者の書かれた本を紹介します。

一人は湯川秀樹先生です。
湯川先生はよく御存じのように
日本で初めてノーベル賞を受賞された方です。
湯川先生の書かれた「學而思」のことは、第21回目に紹介しました
湯川先生には多くの著作があります。
随筆集も学校の図書室にも置いてありますので
興味のある方は読んでください。
そんな中でも、なかなか見ることのできない
湯川先生の歌集を紹介します。

二人目はその歌集に出てくる中谷宇吉郎先生です。
中谷先生は北海道大学での雪の研究で有名です。
石川県加賀市の「中谷宇吉郎 雪の科学館」では、
雪に関するいろいろな展示の観覧とともに実験もでき、
楽しい時間を過ごすことができます。
機会があればぜひ一度行ってみてください。

中谷宇吉郎は、師寺田寅彦から大きな影響を受けています。
寺田寅彦の随筆と中谷宇吉郎の随筆を
読み比べてみるとよくわかります。
全般的に中谷宇吉郎は科学的な手法で
説明しようとしているのがよくわかります。







深山木 - コピー


歌集 深山木(みやまぎ)
湯川秀樹



この歌集は、湯川秀樹先生が退官記念として
昭和46年8月23日に出版されたもので、
奥付には「非売品」と書かれています。
この歌集を私は米山徹先生からいただき持っていました。

昭和15年に札幌で病気になり、その後、
湯川先生は中谷宇吉郎邸にて
「睡蓮の花さかりなる家にゐて日永を『冬の華』に暮らしつ」
という短歌を詠んでおられます。
『冬の華』とは中谷宇吉郎著作の題名です。
中谷宇吉郎の自宅に逗留していたことを詠んでいます。

私は、兵庫県立豊岡高等学校に勤務していた時には
中谷宇吉郎 雪の科学館」の神田健三館長に
いろいろとお世話になりました。
ある時、神田館長と話をしていました時、この短歌の話をしました。
神田館長から「話に聞いたことがあるが実際に読んだことがない。」
というお答えをいただきました。
そこで、米山先生と相談し、『歌集 深山木』を
米山先生からということで神田館長にお話をし、
中谷宇吉郎 雪の科学館」に寄贈しました。
私個人が秘蔵しているより、多くの方々に見ていただく方が
よほど役に立つと思ったからです。

「歌集 深山木」には、
ノーベル賞をもらわれた時のストックホルム滞在中には、
ストックホルム、グランド・ホテルの夜を深み馬蹄ひびきて消えて静けき」
と詠まれた短歌もあります。
また、「原子雲」と題された3首の歌など、
人生の節目節目に短歌を残された
湯川先生の気持ちがあらわれた素晴らしい本です。








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中谷宇吉郎随筆選集 第一巻、第二巻、第三巻
中谷宇吉郎 著(朝日新聞社



この本との出会いは、旧香寺町図書館が市町合併に伴い、
所蔵本の一部を廃棄した時でした。
この時、この随筆集を欲しいと言われる学校がありましたので
お渡しすることにしました。
しかし、その後「もったいないことをした。自分で持っておけばよかった。」
と思いましたが後の祭りです。
そうしているうちに神戸の古本屋で見つけることができ購入しました。

鳥取のYさんが、大の中谷宇吉郎好きであったことも
このように思った原因の一つかもしれません。

中谷宇吉郎の随筆は、教科書で読んだことのある人も多いと思います。
私はその中でも「立春の卵」がいちばん好きです。
私の手元に、昭和22年2月5日と6日の朝日新聞のコピーがあります。
ちょっと時期はずれですが、恵方巻きを食べた翌日、2月4日は立春です。
立春には卵が立つ」という話を知っていますか。
新聞のコピーには、上海や日本の国立天文台の学者が大真面目に
立春には卵が立つ」実験をした記事が掲載されています。
よくもまあ真面目に実験をしたものだと呆れてしまいました。
卵はどのようにして2月4日が立春と理解するのでしょうか?
この随筆選集の第二巻にその話が出ています。
科学的に卵の表面の凹凸や卵の曲率に触れながら解説しています。

中谷宇吉郎北海道大学で雪の研究をしたことで有名ですが、
科学的なことをわかりやすく書いた随筆は
非常に面白く読むことができました。
この随筆をきっかけにこの本を読みましたが、
『雪は天から送られた手紙である』という有名な言葉を残した中谷宇吉郎は、
寺田寅彦との交流のことも多く書かれています。
全部を読まなくてもたとえ一つでも二つでもいいですから、
随筆を楽しんでください。





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*副校長先生のお庭に咲いた『シモバシラ』

シソ科の多年草で、根から吸い上げた水分が茎の周りで凍り、
霜柱のような“氷の花”をつけることからこの名前が付きました。

2013年2月1日付けの神戸新聞でも取り上げられています。
新聞記事

皆さんも、中谷宇吉郎の随筆を読みながら、
身近な雪、氷の結晶に目を向けてみませんか。





* 「副校長の読書散歩」とは?