兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #22

「ひょうご文学散歩」がきっかけで

Selected by 安積秀幸副校長先生

ひょうご文学散歩がきっかけでs

20回目の読書散歩で廣岡徹先生から『ひょうご文学散歩』をいただいたこと、
堀辰雄の「旅の絵」の話を紹介しました。

『新潮日本文学16』の堀辰雄集に「旅の絵」があることを知り、
市の図書館からをお借りしました。
「旅の絵」のサブタイトルに「竹中郁に」と書かれています。
20回目でも触れましたが、この竹中郁さんは、
兵庫県播磨高等学校の校歌の作詞者です。

インターネットを使って調べてみますと
兵庫県内の学校の校歌をたくさん作詞されています。
「副校長の読書散歩」ではいろいろな方にお世話になっています。
また、学校に来られた方や友人から「読んでいますよ」と
あたたかいお言葉をちょうだいすることもあります。
この「旅の絵」から始まった読書散歩の展開を紹介します。





新潮日本文学s

旅の絵(新潮日本文学16)
堀辰雄 著(新潮社)



『ひょうご文学散歩』に紹介されている“T君”は、
読み始めるとすぐに登場します。
“私”は、T君の交渉で神戸のあるホテルの一室に宿泊することになります。
しかし、その部屋は借主がクリスマスのために東京へ出かけており、
たまたま空いている部屋なのです。結局はそこへ宿泊することになり、
借主の荷物の中から本を見つけて読み出すことになります。
現在の私たちの感覚では「え〜っ!」ということになるのですが、
その当時は許されていたのでしょう。
全体的に暗い感じのする神戸滞在記です。

堀辰雄は、
 T君が英語でもって部屋はあるかと声をかけた。
 するとその主人はそれよりもっと下手糞な英語でそれに応じた。
と書いています。
次に紹介する『消えゆく幻燈』では竹中郁さんは、
この「旅の絵」で下手な英語でホテルの主人と交渉した
と書かれたことに、盛んに弁解をしています。
堀辰雄を読むのは初めてなのですが、
持っていたイメージとはたいぶ違っていました。




消えゆく幻燈

消えゆく幻燈
竹中郁 著(編集工房ノア



別件で廣岡徹先生と電話をしました時に、
「旅の絵」を受けるような形で『消えゆく幻燈』を
竹中郁さんが書かれていると話をしました。
廣岡先生曰く「よう探したなあ。」

しかし、この「消えゆく幻燈」は自分で探したのではなく、
この「副校長の読書散歩」でお世話になっている鈴木朝子さんから
教えていただいたのです。
本校の80周年の時にいろいろと調べられ、その時からご存じだったそうです。

この『消えゆく幻燈』は、カバー・扉の装画も竹中郁さんの作品です。
竹中郁さんの交流のあった作家の話が続いています。最初が「堀辰雄」です。

堀辰雄との出会いから「旅の絵」のモデルの“T君”が自分であることについて、
「四季」や「文芸臨時増刊堀辰雄読本」、日本文学全集の月報、
堀辰雄全集の月報などに書かれた作品を集めたものです。
短編ですぐ読むことができました。

堀辰雄との出会いの場が芥川龍之介の自宅であったことや、
「旅の絵」で描かれた神戸のホテルで下手な英語で交渉する話の言い訳など、
大変面白く読むことができました。
廣岡先生は、作家間のつながりに興味を持っておられるようでしたが、
私は、堀辰雄に書かれたことに弁解をしている人間・竹中郁に興味をひかれました。

堀辰雄の次に書かれているのが、「稲垣足穂」です。
稲垣足穂の手紙の写しが私の手元にあります。
いろいろと教えていただいている方から頂戴したものです。
つながりというのは本当に不思議なものですね。



* 「副校長の読書散歩」とは?