兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #13

     

白川静さんの3冊

selected by 安積秀幸副校長先生

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本を読んでいますと、ある1冊がきっかけになって
次々と関連のある本を読むことになることがよくあります。

今回紹介するのも、そのパターンでした。
最初は、恩師米山徹先生からいただいた平凡社新書白川静』でした。
次に岩波新書の『漢字』。
続いて平凡社ライブラリーの『漢字の世界1』と『漢字の世界2』です。

第9回で紹介しました『中国の妖怪』も、
読むことになったきっかけは「虹」という漢字でした。
その漢字の研究に生涯をかけて続けてこられた白川先生。
漢字の世界だけでなく、その生きざまに
多くのことを教えていただきました。

日曜日の神戸新聞に漢字の話が掲載されていますが、
漢字と言えば白川静さんです。
大学時代に白川静さんの教えを受けられた友人からは、
時々白川静さんのエピソードなどもお聞きしました。

この本をきっかけに、白川静さんの教えを受けた友人から
説文解字」も永久貸与してもらっています。
米山先生は漢字のことにも独特のアプローチをしておられます。
米山先生から、
白川静さんの『字統』『字訓』『字通』はもとより、
漢和辞典は『漢辞海』がおもしろい。」
と教えていただき、その後は私も『漢辞海』を愛用しています。



白川1


白川静 漢字の世界観』 
松岡正剛 著(平凡社新書



この本のあとがきは、「豆腐とニガリ」です。
なかなか面白いタイトルではありませんか。

内藤湖南の、
「日本にとっての中国の文化は豆腐のニガリのようなものだ」
という言葉からとられています。

白川静さんの生い立ちから白川先生の考え方まで
巧みな展開で書かれています。

白川静さんに関する本を読んでいますと、
「先生は偉いが異端の学者」という言葉がよく出てきます。

事実に基づく評価ではなく、
妙なフィルターをかけて評価することは
いつまで続くのでしょう。

大学生のころに、趣味としている茶道の研究会が
定期的に京都で開催されていました。
その会には、今や多くの著書を書かれている大家も参加されていました。
私も参加させていただいていましたが、
同じような雰囲気と腹の探り合いを感じ、
足が遠のいてしまいました。
学閥等にとらわれず、異なった考えや思いを
積極的に聞こうということは、それほど難しいことでしょうか。
自分と同じ考えの人はいない。それぞれ違っている。
違っていて当たり前なんですから。





白川2


『漢字――生い立ちとその背景』
白川 静 著(岩波新書



先に紹介した松岡正剛さんの『白川静』のなかで、
世界的なビデオ・アーティストのナム・ジュン・パイクさん、
グラフィックデザイナーの杉浦康平さんとの対話で
白川静著『漢字』は素晴らしいということを書いておられます。

この一文を読んでいて、「次は必ず」と思っていた本でした。
この本は文化論です。
読み終わってからそのように感じました。

ヒエログリフをはじめとして
世界中に象形文字は多くありますが、
現在まで残っている象形文字である漢字について、
もっと知りたいという思いになりました。

松岡正剛さんがあとがきで書かれた
日本文化を豆腐として固めるもととなった
中国文化のニガリの役割を実感できる本ではないでしょうか。
松岡正剛さんの文と違って、読んでいて硬い感じがしますが、
白川さんの人柄や思いが
いっぱいに詰まった一冊ではないでしょうか。




白川3       白川4


『漢字の世界1・2 中国文化の原点』 
白川 静 著(平凡社ライブラリー



この本も、『白川静』→『漢字』の流れについて
米山先生に話をした時に紹介されました。

早速、米山先生に「この本をください。」とおねだりをしたのですが、
「まだ、当分だめだな。」とあっさり断られました。
仕方なく書店で購入しました。
白川静著『漢字』を読んだことから、
漢字をもっと知りたいとの思いがふくらんで読み始めました。

この本には、それぞれ漢字の成り立ち等が説明されていますが、
その漢字の並べ方については、
なぜこのような順になっているのかよくわかりません。
まだまだ読みこなせていないのが現実です。

そのことを考えていると、この2冊の『漢字の世界』には
検索用の出字一覧が記載されていなことに気がつきました。
時々、「この漢字の成り立ちは?」と思った時に
最初から見ていくことも何回かありました。
自分なりのインデックスを作りたいと思っています。
それほど時間はかからないのではと思っています。


* 「副校長の読書散歩」とは?