副校長の読書散歩 #7
「温故知新」の意味を知る2冊
selected by 安積秀幸副校長先生
本校は教育における「不易流行」の「不易」として、
「教養」を重視して「形から入って心を育てる」ことを
大切にしています。
本校が守り続け、推進してきたもの、
日本人が古くから培ってきた素晴らしいものが
忘れ去られようとしています。
我々日本人が大切にしてきたものでありながら、
忘れ去られているものが数多くあります。
そのことに視点を当てた本を紹介します。
『日本人の忘れもの』
京都新聞社・編(京都新聞出版センター)
この本は、平成25年3月24日の神戸新聞で紹介されていました。
サブタイトルに「京都、こころ ここに」とあります。
「一期一会のこころ」「人を信じる」「お先にどうぞ」
「思いやり」「恥を知る心」など、
伝統的な日本文化に深くかかわってこられた方々が
それぞれの視点で書かれています。
まさに本校が大切にしてきた様々なことが、
いかに大切かを実感させられました。
一人一人のお話の間に、
「リレーメッセージ」として、
多くの女性が書かれた1ページがあります。
書かれた方々の顔写真とページの右下に、
色彩感覚豊かな日本人が大切にしてきたさまざまな色が
四角で印刷されています。
その色が何という名前なのか、
調べてみるのもおもしろいと思います。
次に紹介します鷲田清一さんのお話も掲載されており、
なかなか興味深い本です。
この本には一体何回
「待つ」という言葉が出てくるのだろう
と考え込んでしまうくらい
何回も何回も「待つ」という言葉が出てきます。
「待たなくてよい社会になった。
待つことができない社会になった。」
続いて
「待ち遠しくて、待ちかまえ、待ち伏せて、待ちあぐねて、
とうとう待ちぼうけ。待ちこがれ、待ちわびて、待ちかね、
待ちきれなくて、待ちくたびれ、待ち明かして、ついに待ちぼうけ。
待てど暮らせど、待ち人来たらず・・・・。」
と書かれたまえがきを読み始めて、
一体「待つ」ということにかかわる言葉は
どれくらいあるのかと思うとともに
「待つ」ことのじれったさに思わず共感してしまいました。
「走れメロス」で扱われた「待つ」ことなど
いろいろな「待つ」が紹介され、
「待つこと」の気持ちの揺れが感じられます。
インターネット、携帯電話などに追いかけられている毎日。
この本を読んで「待つ」ことをもう一度考えてみませんか。
この本も、以前に紹介した鳥取のYさんに紹介いただいた本です。
鷲田清一さんの文章を初めて読んだのは、
平成20年1月6日の新聞で、
内田樹さんとの対談が最初だったように思います。
今も3か月に1回「汀にて」という随想を新聞に書かれています。
わかりやすく、私とは違った視点で物事を見ておられ、
次の掲載を楽しみにしています。
* 「副校長の読書散歩」とは?