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兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #6

           司馬遼太郎さんの2冊

           selected by 安積秀幸副校長先生


   無題
 
司馬遼太郎さんの書かれた本を読まれた方も多いと思います。
以前から司馬遼太郎さんの本は何冊か読んでいたのですが、
司馬遼太郎さんの本のおもしろさや楽しさを教えてくださったのは
鳥取市に住んでおられるYさんです。

Yさんは、私が豊岡の高等学校に赴任した時の事務長さんです。
非常に気が合い、Yさんには司馬遼太郎さんだけでなく、
写真家の井上博道さん、内田樹さん、鷲田清一さんなど
多くの方々の著書を教えていただきました。

先日も、わざわざ鳥取から
たくさんの資料を抱えて来てくださり、
まさに「有朋自遠方来 不亦楽乎」の
楽しいひと時を過ごすことができました。

※「有朋自遠方来 不亦楽乎」
論語の一節。「遠くから学友が会いにやって来てくれる、なんと嬉しいことか」の意。

司馬遼太郎さん(1923-1996)
大阪市生まれの作家。1960年、『梟の城』で直木賞受賞。
以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表し、多くの賞を受賞。
代表作は『竜馬がゆく』『国盗り物語』『燃えよ剣』『坂の上の雲』など。
司馬史観”とよばれる、自在で明晰な歴史の見方が
絶大な人気を集めている。
*参考:新潮社HP


二十一世紀に生きる君たちへ【リサイズ】


『二十一世紀に生きる君たちへ』  司馬遼太郎



「二十一世紀に生きる君たちへ」は
小学校の教科書で習った方もあるでしょう。

この本には、司馬遼太郎さんが書かれた
「二十一世紀に生きる君たちへ」の原稿が
そのまま写真印刷されています。

推敲に推敲を重ねた原稿を拝見すると、
この「二十一世紀に生きる君たちへ」を書かれたときの
思いやエネルギーがひたひたと伝わってきます。

司馬遼太郎さんは、
「長編小説を書くほどのエネルギーがいりました」と
話されていたそうです。

本には濃い紺色の地に白抜きで
司馬遼太郎記念館」と書かれているだけのカバーがかかっていました。
「二十一世紀に生きる君たちへ」のほかにも、
「人間の荘厳さ」「洪庵のたいまつ」が収録されています。
ブックカバーも、本も、文も大変興味深い本です。





故郷忘れじがたく候

『故郷忘じがたく候』 司馬遼太郎



この本は十四代沈壽官氏の小説です。
沈壽官氏の祖先の
「故郷忘じがたく候」と言われた気持ちを
見事に描かれています。

この本を購入したきっかけは、
薩摩焼窯元十五代の沈壽官氏の講演録を読んだことでした。
講演をされた沈壽官氏は、
1598年豊臣秀吉朝鮮出兵慶長の役)の際に
薩摩藩が連れ帰った陶工の十五代窯元です。

日本と韓国で受けた差別で悩まれたこと、
司馬遼太郎さんに手紙で悩みを打ち明けられたこと、
司馬遼太郎さんからの返事のこと。

その講演録を読み、沈壽官氏の生きざまに
強く心を打たれました。

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講演録から、
司馬遼太郎さんに手紙を書かれるに至った概要を
紹介します。

初代・沈壽官氏は、400年以上前に、
今の韓国から鹿児島に渡ってきました。
沈さんはそこから数えて十五代目の窯元で、
39歳の時にお父さんの後を継がれました。

紹介した『故郷忘じがたく侯』は、
このお父さんを主人公にした小説です。

小説が発売された時に、地元の人たちから
「小説のおかげで朝鮮の歴史を持つ村だということが
 明らかになってしまったじゃないか!」という
強いバッシングがあったそうです。

青年時代の沈さんは、自らのなかにある
「韓国」と「日本」のアイデンティティ
持て余したことがあるといいます。

沈さんはこのことを
司馬遼太郎さん宛ての手紙に書かれたそうです。

次の引用は、その手紙へのお返事です。

「韓国、中国人の心が分かる。
 同時に強く日本人であるということです。
 強く日本人でなければ心理学上はアイデンティティが消えて
 変な人間になります。
 あなたの父君はトランスナショナルな人です。
 面はゆいですが、小生も年少のころから
 そう心掛けて、
 自らを一個の人類に仕上げたつもりです。
 あなたの父君が愛国者無論であるのと同じように、
 小生もそのつもりです。
 真の愛国はトランスネーションの中に生まれます。
 あなたもそのようなおつもりでおられると楽で、
 しかもものをつくる心構えに
 相応しい形になります」


* 「副校長の読書散歩」とは?