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兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

ビブリオバトルを行いました(2016年3月18日)

読書の学校だより

ビブリオバトル練習風景_20160411
事前の練習風景


先月、図書部員2年生(新3年生)3名が
ビブリオバトルに挑戦しました。

昨年の学芸発表会において、
図書部員全員でチャレンジして以来となる
2度目のビブリオバトルです。

今回は、教職員が「観客」になりました。

本校では、朝の読書や、「播磨の100冊」の選定、
そして図書室からの積極的な情報発信を通じて、
生徒の皆さんと読書との新たな出会いの「きっかけ」を
ひとつでも多く持ちたいと願っています。

ビブリオバトルも、
そんな「きっかけ」のひとつとして、
いずれは、学校全体で取り組むことができたらと考えています。


ビブリオバトルとは?
 →こちらの記事[2015年11月14日公開]の末尾の解説をご覧ください。




図書部員が取り上げた本(発表順)
1. 『レインツリーの国』 有川浩 著 (新潮社)
レインツリーの国20160411


2. 『ダレン・シャン 2』 ダレン・シャン 著 (小学館
ダレンシャン220160411


3. 『君の膵臓をたべたい』 住野よる 著 (双葉社
君の膵臓をたべたい20160411


当日は、
何度も重ねた練習の成果が存分に発揮されて、
発表者一人ひとりの語りがとても印象に残りました。

熱心にメモを取りながら
発表者のプレゼンに耳を傾けてくださる教職員も多く、
とてもいい雰囲気のなかで、
約40分の時間を、発表者全員が思い切り楽しむことができました。

プレゼン後の投票では、上記の発表順に、
それぞれ11票、17票、17票を集め、
ダレン・シャン 2』 『君の膵臓をたべたい』が
同率で「チャンプ本」になりました。

副校長の読書散歩 #59

副校長の読書散歩

絵本を読む

Selected by安積秀幸副校長先生


59-2resize.jpg




2000年10月12日の木曜日、
当時勤めていた兵庫県立教育研修所が主担当となって
全国教育研究所連盟の全国大会を神戸で開催しました。

その大会で記念講演をお願いしましたのが、
この読書散歩の第4回で紹介しました河合隼雄先生でした。
先生は 当時、国際日本文化研究センターの所長をしておられました。
その時の講演の一部を紹介しましょう。


  今日も来る途中で児童文学を読んでいました。
  皆さんにもぜひ勧めたいです。
  教育研究所で研究の第一歩は児童文学を読むことだ、
  というくらいに思っていただいてもいい。
  絵本もぜひ読んでください。推薦します。

  どこがいいかと言うと、人と話をするとき恰好がいいんです。
  「どのくらい本を読まれますか。」と聞かれると
  「いやあ、今日は1日に3冊読みましたよ。」とか
  「1週間で20冊はかるいですな。」なんて言うてる。
  本当は絵本ですから、バラバラっと見てるんですが、
  それは分かりませんから、皆さん感心するんです。

  ところが絵本というのは本当に素晴らしい。
  バラバラっと見るだけと言いましたが、考え出すときりがないのです。
  いろんなことを考えさせられます。
  そういう意味で児童文学を僕は勧めたいと思います。


と言っておられました。

2016年2月21日、NHKの「サキどり」という番組でも
絵本を取り上げていました。
その中で出演された方が河合隼雄先生と同じようなことを言っておられ、
絵本にかかわる仕事に転職されていました。

子どもが小さい時には絵本を読んで聞かせたことを
懐かしく思い出しています。
今は、「孫にこんな絵本はどうかなあ。」と思いながら
時々本屋さんの絵本コーナーをのぞいています。







おやすみ、ロジャー

おやすみ、ロジャー
カール=ヨハン・エリーン 著
三橋美穂 監訳(飛鳥新社



こんな絵本は知りませんでした。
「サキどり」で紹介されていたので本屋さんで買って帰りました。
最初に行った本屋さんでは売り切れになっていました。
駅中の本屋さんで聞いてみたところ数冊が平積みになっていました。

帯には「たった10分で、寝かしつけ!」と書かれています。
本文が始まる前には「本書の読み方の手引き」が
1ページにわたって説明されています。

最初に「車を運転している人のそばで絶対に音読しないこと。」とあります。
【あくびする】では実際にあくびをしながら読むこと、
【なまえ】にはお子さんの名前を入れるなどと
注意事項が細かに書かれています。

河合隼雄先生が言われたように、
帰りの電車の中でバラバラっと読み終えてしまいました。

放送された番組では実際に保育園でお昼寝の前に
先生がこの「おやすみ、ロジャー」を読み聞かせて
寝かしつけておられました。
孫にもプレゼントしようかなあと思っています。

今までにない新しい絵本が出ています。
楽しんでみようと改めて思いました。




* 「副校長の読書散歩」とは?

副校長の読書散歩 #58

副校長の読書散歩

中国の古代哲学と日本文化

Selected by 安積秀幸副校長先生


黒





「陰陽五行」 *という言葉を聞かれたことがあると思います。

私は焼物が趣味で、多くの陶器や磁器を拝見してきました。
時々、易や八卦**にかかわる模様や絵が描かれているのを
見ることがありました。
最初は何げなく「ふ〜ん」と見ていましたが、
頭の片隅に残っていました。

そうしたなか、日本文化に関係する本ということで、
吉野裕子さんの書かれた本を
たまたま2冊読む機会がありました。
日本の文化を見ていくうえでの
別の切口を教えていただいた気持ちになっております。

また、茶道の中でも、「なぜ?」と思うことがあり、
その理由が分からないままのことが多くあります。
多くのことが理解できていない自分が居ることを感じています。

いつになるか分かりませんが、
じっくりと時間をかけて考えなければと思っています。



*「陰陽五行」
古代中国で生まれた思想。
春秋戦国時代(紀元前770〜同221年)頃、
陰陽と五行というふたつの思想が結びついて体系づけられたといわれる。
陰陽は、万物を「陰」と「陽」のように相反する形で存在するものとして捉え、
五行は木・火・土・金・水の5つの要素によって成り立つものとして解釈する。
陰陽五行の基本は、五行と十干(「甲・乙」「丙・丁」「戊・己」「庚・辛」「壬・癸」)の組合せである。

「易」「八卦

易は、太古からの占いの知恵が体系づけられた儒教の代表的な経典で、
「五経」のひとつにも数えられる。
八卦は、易において用いられる8つの基本図像のこと。
2種類の記号(爻:こう)3つの組み合わせからなる。








カミナリさま

カミナリさまは、なぜヘソをねらうのか?
吉野裕子 著(サンマーク文庫)



この本は新聞の読書欄に紹介されていました。
副題に『暮らしに息づく「陰陽五行」の秘密』とあります。
新聞の紹介文には、

正月に羽根つきをする。節分に豆をまく。キュウリ巻をカッパ巻と呼ぶ。
こうした今に伝わる行事や風習、言葉には
れっきとした根拠や理由があった。
古代中国の哲学である陰陽五行説を手がかりに、
言い伝えの謎を解いていく。

とあります。
タイトルの面白さ、紹介文の面白さにひかれて購入しました。

「陰陽五行」はあまり詳しくはないのですが、
木(もく)、火(か)、土(ど)、金(ごん)、水(すい)における
「五行相生」といわれるプラスの関係、
「五行相剋」といわれるマイナス関係、
さらに自然界のものが五行のどれに属するのか
といったことが解説されています。

また、目次には次々と面白い題が並んでいます。
十二支十干とのかかわり等から、
タイトルにある「カミナリさまは、なぜヘソをねらうのか」や
「桃太郎のサル・キジ・イヌは、何を表しているのか」
「浦島太郎はなぜ玉手箱をもらったのか」なども説明されています。

日本で昔から言われてきたことが、
今は言葉だけになっているものも多いのですが、
「なぜ」そのような事が言われたのか、
なかなか興味深い本との出会いでした。






陰陽五行

陰陽五行と日本の文化
吉野裕子 著(大和書房)



先に紹介しました『カミナリさまは、なぜヘソをねらうのか?』と比べて
もう少し詳しく書かれています。

中でも私の趣味の1つである茶道に関連した
「易・五行と茶の世界」や「易・五行と庭園」等は
面白く読むことができました。

茶道の本を読んでいますと時々
曲尺割(カネワリ)」という言葉に出会います。
点前をしていて、多くの茶道具をどの場所にどのように配置を考え、
置くのかということのようです。
今までも、分からずじまいで適当に読み飛ばしていました。

「カネ」とは「矩」のことですが、
「法則による割り出し法」という意味のようです。
このように説明されても何のことか分かりません。

この本では、茶道の古典の1つ『南方録』に
書かれていることが解説されています。
「カネワリ」は『南方録』の「墨引」の巻に書かれています。
「墨引」はあまりにも秘伝が書かれすぎているために
利休が廃棄を命じ、「墨で線を引いて消してしまった」という
由来から名付けられたと言われている巻です。
やはり読んでもあまり分かりませんでした。

『南方録』とこの本を畳の上に置いて
実際に道具を並べて考えながら、
何回もやってみないと分からないのでしょう。
「もっと茶道と陰陽五行を理解しなさい。」と
お叱りを受けそうなのですが……。




* 「副校長の読書散歩」とは?

「朝読」コーナー、はじめました。

図書だより

朝読の看板


図書部の部長が中心になって、
朝の読書におすすめの図書
計21冊をセレクトしてくれました。

図書館に入ってすぐのところに、
新しくコーナーを設置しています。

本を配架しているのは、
図書室改造にいつも協力して下さっている
後藤先生手作りのブックトラックです。

作品の魅力を伝えるPOPも、図書部長によるオリジナルです。
※写真をクリックすると、別画面にて拡大表示されます。

『君の膵臓をたべたい』 住野よる
ポップ1_201603010943

シアター!有川浩
ポップ2_20160301

『話し方のマナーとコツ』杉山美奈子
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『つるかめ助産院』小川糸
ポップ4_20160301

明日の「朝読」に、いかがですか?
朝読書におすすめの図書コーナー


そのほか、図書館入口のボードには、
映画情報と一緒に
北村教諭作成の「YOMOYOMO」を掲示しています。
今号のテーマは「◯◯と◯◯」のタイトルが付いた外国文学です。

入口のボード
入り口のボード 映画情報と北村教諭作成「YOMOYOMO」


また、新刊コーナーには
芥川賞受賞作品のほか、話題作をディスプレイしています。

新刊コーナー
新着図書紹介コーナー

副校長の読書散歩 #57

副校長の読書散歩

地域の歴史

Selected by安積秀幸副校長先生


読書散歩57 - コピー



兵庫県でも多くの市町合併が行われ、
私の住んでいる香寺町
「神崎郡香寺町」から「姫路市香寺町」に変わりました。

合併前には香寺町史も編纂されました。
新しくできた市町においては
いわゆる「ゆるキャラ」が多く作られ
地域のPRが盛んに行われています。

一方で、地域の歴史本も多く出版されているようです。
市町や地域の歴史研究をされている方々の
本を読む機会がありましたので紹介します。







河合寸翁リサイズ

姫路藩の名家老 河合寸翁
熊田かよこ 著(神戸新聞総合出版センター)



この本の副題には「藩政改革と人材育成にかけた生涯」とあります。

河合寸翁については、小学校で地域の偉人として習って以来、
姫路酒井家の家老として藩政に力を尽くしたということくらいしか知らず、
詳しく調べたこともなく済んでしまっていました。

藩の実収入の7倍余りに相当する
73万両にも膨れ上がった藩の借金を返済し、
酒井家の格をあげることに尽力し、
仁寿山校という名の学校を創設し、
頼山陽等有名な学者を招き講義を行うなど
人材育成にも尽くした人物です。

時の老中水野忠成は

「雅楽頭(うたのかみ)は毒にも薬にもなき者なれども、
家来に河合隼之助(寸翁)といふよき家老あり、
とかく家来はよきを持ちたきもの」

と言ったとあります。

巻末に関連の資料がまとめてあるのもまた、
この本を興味深く読めたことの理由の1つと思います。

藩の借金財政を改善するために木綿の専売制を導入し、
大坂を経由した販売から江戸での直売に切り替えることにより
収入を大幅に増やします。

他の藩からは「なぜ姫路藩だけ優遇するのか」と
幕府に申し入れがありますが、
将軍の娘との婚姻などを理由に
姫路藩への優遇は継続されます。

また、他に藍染や東山焼と言われている焼物、
蝋燭、塩、皮革、竜山石、絞油、「玉椿」という名の菓子などの
いわゆる殖産興業に力を入れます。

東山焼
*東山焼


玉椿は、藩主忠学と将軍の娘喜代姫との婚礼に合わせて
伊勢屋に作らせたとあります。
黄色い餡のおいしいお菓子で、
江戸時代には参勤交代時に
将軍への手土産に持って行ったということです。
今も姫路の銘菓になっています。

姫路の藍染は「かちん染め」と呼ばれ、
明治時代まで生産されていました。
江戸時代の袱紗が姫路市書写の里・美術工芸館に収蔵されています。
また、松影の模様をあしらった
高砂染」という名前の藍染も今日に伝わっています。

高砂染・数奇屋袋リサイズ
*高砂染による数寄屋袋


殖産興業に尽力しただけでなく、
藩の行政から身を引いた後にも
人材育成に尽力した河合寸翁は、
先を見通した素晴らしい人物と思っています。







多可の里風土記リサイズ

多可町合併10周年記念誌 多可の里風土記 〜62集落を訪ねて〜
多可町 著



この本は、兵庫県播磨高等学校で
「姫路学」を指導していただきました
埴岡真弓先生に頂戴しました。

この本の目次の後に「例言」として、

本文中の原稿は、
播磨学研究所運営委員兼研究員埴岡真弓氏に依頼して作成し、
編集は、多可町教育委員会教育総務課那珂ふれあい館にて行った。

と書かれています。

カラー写真もふんだんに入れてあり、
多可町のことが1ページに1話、
分かりやすくまとめられています。

各区の最初のページにはコラムが1つ設けられており、
中区は「山田錦」、加美区は「杉原紙」、八千代区は「敬老の日
という見出しでそれぞれ書かれています。
最初が酒米として有名な「山田錦」です。
八千代区が敬老の日の提唱の地だったことを初めて知りました。

地域の行事や神社仏閣について
地域とのつながりを中心に紹介されています。







なるほど但馬史リサイズ

なるほど但馬史
瀬戸谷晧 著(但馬歴史文化研究所)



この本が出版されたことを神戸新聞で知りました。
記事には、但馬地域の書店で販売されているとありました。

但馬は本当に歴史的にも文化的にも素晴らしい地域です。
県立豊岡高等学校赴任中の2年間に、
多くの方に但馬について教えていただくことができました。

読んでみたいと思い新聞に書かれていた連絡先に電話しました。
「お送りしてもいいのですが、送料がかかりますので、
 但馬に来られた時にでも書店で……。」ということでした。
できるだけ早く読みたかったので、友人に頼んで送ってもらいました。

表紙のコウノトリの写真の中に、小さな文字で
「古代から 現代 未来へ」と書かれています。
目次を見ると、今まで教えていただきました
多くのことが掲載されていました。

美しい写真や楽しい絵とともに
1ページに1話をまとめられており、
古事記1300年」のところでは、私の好きな
伊豆志袁登賣(いづしをとめ)藭の藤の花の話も
素晴らしい絵とともに紹介されています。

橘の実を持ち帰った田道間守(たじまのかみ)の話も、
お菓子の神様として有名な中嶋神社の鳥居の写真と
一緒に紹介されています。

古代の話だけでなく北但大震災からの復興も取り上げられ、
但馬史を幅広く紹介されています。







高野の風リサイズ

大字誌 高野の風
香寺町 田野自治会 著



この本は、私の住んでいる自治会が刊行しました。

タイトルの「高野」は村の高野神社の名前から取っています。
播磨国風土記にも出てくる由緒ある神社です。

以前自治会の役員をしていました時にこの本の刊行の話が出て、
月に2回ほど担当者が集まり編集作業が始まりました。
自治会役員を外れたこともあり、
この編集作業からも遠ざかっていましたが、
先日自治会の各戸に配布されました。

多くの方から寄せられた意見の調整など
大変な作業だっただろうなと思います。
編集に携わられた方の御苦労に感謝したいと思います。

目次を見ますと、
「ふるさとの由来」、「遺跡と古墳」、「社寺と信仰」、
「史跡と争乱」、「生活の移り変わり」、「水利と農業」、
「民俗行事と伝説」などが
関連文書や史跡の写真とともに解説されています。
地域を知る貴重な資料です。





* 「副校長の読書散歩」とは?

副校長の読書散歩 #56

副校長の読書散歩

忙しくなると

Selected by 安積秀幸副校長先生


読書散歩56TOP



どうも仕事などが忙しくなると本が読みたくなる性分は
若い時から続いているようです。
高校生の時にも試験が近づくといろいろと本が読みたくなって、
試験勉強をほったらかしにして読みふけったことが
何回もありました。

年度末に近づくにつれ、ばたばたとした日が続きます。
そうすると若い時からの虫が顔を出して
数冊の本を並行して読み始めてしまいます。
机の上には読みかけの本が数冊積みあがってしまいます。

今も同じような症状が起こっています。
通勤電車の中でも読みふけっています。
乗り過ごさないように気をつけながら。

読み終えた本を紹介しましょう。





声をあげよう

声をあげよう 言葉を出そう
安水稔和 著(神戸新聞総合出版センター)



この本の副題には「神戸新聞読者文芸選者随想」と書かれています。
神戸新聞の読者文芸欄の詩の選者をされている
安水さんの随想です。
見開き2ページで1つの随想が書かれていて
大変わかりやすく、読みやすい本でした。

随想と副題に書かれていますが、全ての文章が「詩」だと感じました。
書かれている文の体裁は決して詩のような形ではないのですが、
読んでいて詩を読んでいるような感覚でした。

自然を見、人を丁寧に見られている文章でした。
戦争体験のことも書かれています。
阪神・淡路大震災の体験談も書かれています。
お孫さんとの触れ合いも書かれています。
菅江真澄*のことも書かれています。

何より印象に残っていることは
竹中郁さんがしばしば登場されることです。

そのうちの1つに「もう一本の傘」というのがありました。
竹中郁さんは兵庫県播磨高等学校の校歌の作詞をされています。
このコーナーでも第22回に竹中郁さんを取り上げましたが、
神戸の竹中郁さん行きつけのお店に、
竹中郁さんの書かれた傘の絵が残っていることを思い出し、
興味深く読ませていただきました。
番傘の詩だけでなく、蝙蝠傘の詩も紹介されています。

どの話にも、「いいなあ」と感じる一言を発見できます。
安水さんの優しさあふれる1冊です。

この本を読み終えてから神戸新聞読者文芸欄の選者評を読みました。
選ばれている詩もほんわかと暖かいものが多いのですが、
評も暖かくゆったりとした気分になることができました。

 
*菅江真澄
 江戸時代後期の国学者・紀行家。
 生地である三河から北上して東北を巡り、蝦夷地にも足を伸ばしました。
 各地を歩きながら残した200冊に及ぶ記録は、「菅江真澄遊覧記」と総称され、
 挿絵の風景画とともに貴重な民俗資料として知られています。




花鏡

室町耽美抄 花鏡
海道龍一朗 著(講談社



この本を読むきっかけは新聞の広告です。

日本の伝統美が4人の人物伝を通して書かれています。
「風花」は世阿弥元清、「花鏡」は金春禅竹
「闇烏」は一休宗純、「詫茶」は村田珠光です。
申楽と能にかかわる「風花」と「花鏡」は
一続きのように読むことができました。

「風花」では、足利義満世阿弥

「そなたが舞わずとも、花はいつか散る。
されど、それはただ悲しいというだけのことではあるまい。
余の眼には、全く別のものが見えておるのだがな」
「・・・・・・義満様には、何が見えているのでありましょうや?」
「風の姿だ」

という会話から全てが始まっているように思えます。

「花鏡」では、世阿弥の奥義をめぐって
いろいろな人の葛藤が書かれています。
しかし、その奥義とは?面白い展開でした。
 
「闇烏」での一休さんは、
幼い子どもと一緒に見たテレビアニメ「一休さん」とは
全く違った激しい人物が描かれています。
タイトルに出てくる闇烏は一体誰の化身なのでしょうか?

「詫茶」の村田珠光ですが、
珠光を扱った小説はあまり読んだことがなく、
興味深く読み進めることができました。
武野紹鴎、千利休へと続く侘茶。
タイトルとなっている人偏ではなく言偏の「詫茶」は、
登場する一休宗純のひとことなのですが、なかなか面白い展開でした。

世阿弥の奥義、闇烏、一休宗純の一言は
それぞれの方々の求道にかかわる言葉です。
日本伝統美のひとつのおもしろいとらえ方と感じました。

日本の伝統芸術となっているそれぞれの道に取り込まれた
自分自身との厳しい戦いが切実に感じられる4編の話でした。







天の茶助

天の茶助
SABU 著(幻冬舎文庫



この小説を読むきっかけは、2015年10月20日に本校へ来られました
ナザレ校の副校長先生から、後日いただいたメールです。
そのメールの追伸には次のようにありました。

 I met Her Imperial Highness Princess Takamado yesterday in Warsaw!!
 The Embassy of Japan invited us for a very special evening
 when we could watch the film: "Chasuke's journey" directed by Sabu.
 Her Imperial Highness Princess Takamado welcomed everyone
 and mentioned that it was her second visit in Poland.

(訳)
 昨日ワルシャワにて、高円宮妃殿下にお会いしました!!
 日本大使館が、SABU監督の映画『天の茶助』を観ることができる、
 とても特別な夕べに私たちを招待してくれたのです。
 高円宮妃殿下は、皆を歓迎してくださり、
 ポーランドを訪れるのはこれで二度目だとお話されました。


その時上映された映画の「Chasuke's journey」というタイトルが
気になり、調べてみました。
その原題が「天の茶助」で、文庫で出版されていることを知り、
帰りに本屋さんで買ってしまいました。

全く奇想天外な展開の小説でした。
茶助は天で我々地上の人類一人一人の人生のシナリオを書いているところで、
ライターにお茶を配っていました。
ライター達は、時々お越しになる「あの方」の発する
ひとことに沿うようなシナリオを書いています。

ある時「あの方」は「斬新ぃ〜ん!斬新ぃ〜ん!」といって帰られました。
今まで考えていたシナリオを書きかえるために
ライターは茶助に助言を求めます。
その茶助の一言で、茶助が気にしている女性ユリが
交通事故で死んでしまうというシナリオが描かれます。

ユリを助けるために茶助は、地上界に降りることになります。
この後がまあまあスピード感にあふれた手に汗を握る展開となります。
「あの方」の言われた「斬新ぃ〜ん!斬新ぃ〜ん!」なんでしょうか。

買った文庫本は鳥取のYさんにお送りしました。
Yさんから、「『天の茶助』はなぜ送ってもらったのでしょうか。」
と聞かれました。
またお会いした時に感想をお聞きしたいと思っています。

非常に楽しく読ませていただきました。
機会があればナザレ校の先生と
お互いの感想を話してみたいと思っています。







日本婦土記

日本婦土記
山本周五郎 著(新潮文庫



この本は、茺田嘉之先生に紹介されました。
茺田先生も本校で教員をしていることを友人に話をされたところ、
この本をぜひ読むべきだと言われたそうです。

山本周五郎著作は学生時代に一度凝って読んでいたことは、
第15回目にもお話をしましたが、今でも文庫本が本棚に残っています。
人間味あふれる、また、滑稽とも思えるような面白さに
のめり込んだ時期でした。

久しぶりに読んだ山本周五郎でした。

この本の解説によると、山本周五郎の本名は清水三十六(さとむ)。
山本周五郎という名前は、大正5(1916)年に徒弟として住み込んだ
質屋の御主人の名前です。
「生涯の恩人」であるご主人は、
共に自然科学や人文科学の読書に励み、
三十六を夜学に通わせるなど物心両面で支援された方だそうです。
その「生涯の恩人」の名前を名乗っておられるそうです。

江戸時代の武士を中心とした社会の女性の生き方が
11篇の小説で紹介されています。
現在の我々から見ると「何でそこまで」と思うことが多いのですが、
「清々しいまでの強靭さと、凛然たる美しさ、哀しさがあふれる
感動的な作品」とカバーに紹介されています。

最後の「二十三年」は、
ある会津武家に奉公にあがった「かや」が主人公です。 
やがて、奉公先の奥さんが亡くなり 、
その上松山に移りますが、その間「かや」は
記憶もなく口もきけないふりをして一家を支え続けるのです。

「不断草」は、
類が及ばないようにとわざと離縁された「菊枝」が、
目の見えない義理の母親に尽くす道を選ぶ話です。
読み終えた時には涙が出そうになりました。

解説には山本周五郎さんの思いも書かれています。
是非、解説を先に読んでから11篇の小説を読んでください。




* 「副校長の読書散歩」とは?

副校長の読書散歩 #55

副校長の読書散歩

ポーランドとナチ

Selected by安積秀幸副校長先生


TOP - コピー



前回、戦後70年を記念して
日本で出版された本を紹介しました。

姉妹校であるナザレ校の国、
ポーランドでも第二次世界大戦にかかわる本が出版されていました。
ナチが行った非人道的な行いはいろいろな本で紹介されています。

今回は、ポーランドからナチに拉致され、
ドイツ人家庭で育ち、
再びポーランドの両親のもとへ帰ることができた方の自伝です。

機会があれば、この本についてナザレ校の先生方とも
話をしたいと思っています。







ぼくなちリサイズ

ぼくはナチにさらわれた
アロイズィ・トヴァルデツキ 著(平凡社ライブラリー



この本を読むきっかけになったのは、
新聞の紹介記事でした。

原題を訳しますと「圧制者の手先の学校」です。

第二次世界大戦中、
ナチは「レーベンスボルン」という秘密組織を作り、
その全権をヒムラー*1に 委任します。
その「レーベンスボルン」によってポーランドから拉致され、
ドイツ人家庭の養子にされた人の自伝です。

訳者の解説にはじまり、指令書、
ドイツ人の友人に宛てた1通目から18通目までの手紙、
資料、訳者あとがきで構成されています。

指令書の項では、ヒムラー等が発した
多くの指令書があげられています。

18通の手紙には、ポーランドから拉致され、
ドイツ人家庭の養子になり、
再びポーランドの両親のもとに帰っていく過程が書かれています。

著者、ドイツでの養父母やポーランドの両親の心の動き、
苦悩が切々と書かれています。

オシフィエンチムアウシュビッツ)のことが書かれた
12通目の手紙には、長崎に滞在された
マクシミリアン・コルベ神父*2 の話も出てきます。


  なぜ、このようなことが起こったのか。
  なぜ、このようなことができたのか。
  そのことを、皆さん考えてください。
  考えても、答えは出ないかもしれません。
  私も、答えはわかりません。
  しかし、考え続けてください。



ポーランド研修で訪問したアウシュビッツ
日本人ガイドの中谷剛さんの、この言葉を思い出しながら、
本書を読みました。

日本でも、北朝鮮による拉致はまだ解決していません。
早く解決し、ご家族と会えることを願っています。




*1 ハインリヒ・ヒムラー。ドイツの政治家。
 ナチス親衛隊「SS」の隊長を務め、ヒトラーの右腕ともいわれた。

*2 ポーランドカトリック司祭。アウシュビッツ収容所で
  餓死刑に選ばれた男性の身代わりとなったことから、
  「アウシュビッツの聖者」と呼ばれる。



* 「副校長の読書散歩」とは?