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兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

参与の読書散歩 #64

和の色に出会う

Selected by安積秀幸参与先生

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「和の色」のことについては、第7回の
「日本人の忘れもの」でも少し紹介しましたが、
日本には本当に微妙な色の違いが異なった名前で伝わっています。

「城ケ島の雨」の北原白秋の歌詞にも
「利休鼠の雨が降る」
と出てきます。
以前からどんな色なんだろうと思っていました。

兵庫県立豊岡高等学校で一緒に勤めていました鳥取のYさんに
「染司よしおか」のコースターをいただき、
その渋い色に驚きました。

今回は、引き続き朝井まかてさんの作品と、
「和の色」を集めた事典ですが、
「和の色」の素晴らしさに新しい発見をすることができました。







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残り者
朝井まかて 著 (双葉社



縹色(はなだいろ)、憲法黒(けんぽうぐろ)や
繧繝縁(うんげんべり)をはじめ、
白綸子地に筥牡丹唐草紋の縁錦など――
聞いてわかりますか?
「豪華絢爛な雰囲気はわかるものの、さてどんな色?どんな模様?」と
聞きたくなるような言葉が随所に出てきます。

この本は岩崎東里先生に『眩』をお返しした時に借りました。
前回と同じ朝井まかてさんの
江戸時代末から明治時代の初めにかけての小説です。
表紙カバーに素晴らしい色模様の
着物姿の登場人物五人が描かれています。

慶応四年四月十日、
江戸城明け渡しを明日に控えた大奥で始まります。
天璋院篤姫)に仕えた呉服之間の「りつ」、御膳所の「お蛸」、
御三之間の「ちか」と御中臈の「ふき」、
静寛院(和宮)に仕えた呉服之間の「もみじ」の五人が、
それぞれ一橋邸や田安邸に移らずに
江戸城中に残った長い一日の物語です。

天璋院付と静寛院付の者たちの対立感情と絡み合って
おもしろく話が展開していきます。
なぜ、この五人は命令に逆らって江戸城内に残ったのか。
御中臈の「ふき」はそれとなく
旗本出身の「りつ」にその一端を話すのですが、
肝心のところははぐらかしてしまいます。
また、その言い方に面白さを感じます。

みんなが江戸城から撤退する時の慌ただしさ、
五人だけになった城内の静けさ、
官軍が入ってきたときの雑然とした雰囲気が、
朝井まかてさん独特のリズムのある文で見事に描かれています。

大奥のきらびやかな一端と、幕府が崩壊し江戸城を明け渡す前後の、
喧噪、静けさ等、表現の素晴らしさに、
時間の移り変わりを楽しむことができる作品でした。

ところで、縹色、憲法黒とはどんな色なのか、興味ありませんか?




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定本 和の色事典
内田広由紀 著 (視覚デザイン研究所)



気になっていた「利休鼠」、この事典で調べてみました。
緑のかかった灰色です。
雨に煙る風景を見事に表現しています。

兵庫県立豊岡高等学校に勤務していましたのは
もう10年近く前になりますが、その頃に
視覚デザイン研究所から
「和の色事典」の紹介パンフレットが送られてきました。
前回紹介しました版画の素晴らしい色の表現のこともあり、
図書室で購入することにしました。
たくさんの色に大きな驚きを感じました。

この事典が気になっており、
あらたに購入して今も本棚に並んでいます。

「日本の色名は500の固有名と100のトーンの組み合わせでつくられている」
と書かれています。

ところで、「残り者」で出てきている縹色、憲法黒とはどんな色なのか、
「定本 和の色事典」を調べてみました。


「縹色(はなだいろ) 
別名 花田色・縹色(ひょうしょく)・花色 

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青色の代表的な色名。古くははなだ色、平安時代は縹色、
江戸時代には花色と色名を変えて伝わった。」とあります。
ツユクサの花の青い汁で摺染したことに由来するとあります。
また、落語の「花色木綿」に出てくる色とあります。
「あの花色木綿の色か」と新しい発見をしました。
落語を聞いていた時「花色」は、
桜の花に近い色かなと思っていたものですから。


憲法色(けんぼういろ) 
別名 憲法黒・憲法茶・憲法色(けんぽういろ)・憲法染・吉岡染・兼房

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京都の染匠・吉岡憲房によって考案された吉岡染の色。」とあります。
「橙みの黒」の系列と書かれていますが、渋みのある色です。
吉岡家は宮本武蔵と決闘した吉岡一門としても有名です。
武士に好まれた色のようです。


しばらく、「和の色事典」を楽しんでしまいました。




* 「副校長の読書散歩」とは?

参与の読書散歩 #63

葛飾北斎との出会い

Selected by安積秀幸参与先生

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葛飾北斎の絵との出会いは二つあります。
一つは米山徹先生からいただいた手摺木版「富嶽三十六景画集」です。


富嶽三十六景画集帙

手摺木版『富嶽三十六景画集』の帙。
「帙(ちつ)」とは和本を包んで保存するための装具で、とくに、複数の巻をまとめた本に用いられます。


神奈川沖

富嶽三十六景のなかでも最も有名な作品「神奈川沖波裏」。大きな波と、波に揺れる小舟の向こうに富士山が描かれています。


昭和40年2月に高見澤忠雄氏の監修で
「悠々洞」(出版社)から出された四十六枚の版画です。
県立豊岡高等学校勤務の時に学校所蔵の版画集の話で、
「版画の技術は素晴らしいですね」と「型押し」という技法について、
米山先生と酒を酌み交わしながら言った時の事でした。

「型押し」とは色を付けずに紙を板に押し付けて模様を写し取る技法です。
着物の模様や、袖口等に使われているのを見たこともあります。

歌麿(型押し)

歌麿(拡大)

「型押し」の技法を用いた喜多川歌麿の絵。下の方の女性の首や胸のあたりに色をのせずに線だけで表現しているところが見えます。ほかにも、女性の顔の輪郭を型押しで描いたものや、重ね着した着物の袖を型押しで表現している作品もあります。いずれも「粋」を感じさせます。

その時に米山先生は、「『富嶽三十六景画集』『東海道五十三驛画集』
歌麿名作撰』の三つの版画集をそろって持ってるよ。」
とおっしゃいました。
いつもの通り何回もおねだりして結局三つともいただいてしまいました。

東海道五十三驛画集帙

東海道五十三驛画集』(安藤広重)の秩。
東海道五十三驛画集』は、江戸時代に整備された「東海道」という道にある53の宿場を描いたもの。


最初に入っている目次

東海道五十三驛画集』の目次。「東海道五十三驛画順」とあります。


蒲原_convert_20160805193152

五十三驛のうち16番目の「蒲原(かんばら)」。蒲原町は、現在の静岡県清水区に位置します。


歌麿名作撰の帙

歌麿名作選撰』の秩


分割配本時の表紙

歌麿名作撰』(分割配本時のもの)

授業で物理を教えながら生徒と一緒にこの三つの版画を鑑賞し、
日本の芸術の素晴らしさについて話をしてしまったこともありました。

もう一つは、第49回で紹介しました友人と、20年ほど前になりますが
徳島から香川に移動する途中に一杯千円するコーヒーを飲んでいて、
その店の一角で「北斎漫画」の木版摺一枚を見つけたことです。
その後、出版元である京都の「芸艸堂」に伺い、セットで購入しました。

北斎漫画箱

北斎漫画』の入っている箱


北斎漫画帙

北斎漫画』の帙


北斎漫画3冊

北斎漫画』全15冊のうちの3冊


最初に購入した北斎漫画

北斎漫画』の中身。左がすずめ踊りをする男性を描いた「雀踊」、右が「相撲」。

その時、芸艸堂さんの蔵の中を見せていただき、
おびただしい数の版木を拝見した時の感動は今も忘れることができません。
版木というのは、印刷のための文字や絵を彫った板のことです。

再び「芸艸堂」に伺った時には
北斎と同じく近代日本を代表する画家である伊藤若冲
拓版摺りの「玄圃瑤華(げんぽようか)」一枚を購入しました。

眩

伊藤若冲「玄圃瑤華(げんぽようか)」(拓版摺り)。「玄圃」は理想郷を、「瑤華」は美しい花を指す。写真はこの作品集のなかの「瓢箪(ひょうたん)」を描いたもの。なお、2016年現在、伊藤若冲の生誕300年を記念して京都の細見美術館において回顧展が開催されています。

遊び心水墨画に満ちて(伊藤若冲)20160729神戸青空主義_convert_20160806094114

神戸新聞の記事(2016年7月29日付)


北斎漫画」は北斎没後も、13編が嘉永2年に出され、
15編は明治11年に刊行されています。
絵の指南書だけでなく、江戸時代の風俗や生活を知る上でも興味ある本です。







若冲


眩(くらら)
朝井まかて 著 (新潮社)



この『眩』を読むことになったのは、
平成28年6月26日の新聞の読書欄に紹介されていたことと、
図書室で岩崎先生との「何か面白い本はないですか」と聞いた時に
教えていただいたことがきっかけでした。

『眩』は、葛飾北斎の娘、應爲「栄」が主人公になっています。
父・北斎の胡坐をかいた足の上で
絵が描かれていくのを見ていたころからの話が書かれています。
本全体がテンポの良い文章で構成されていて、
北斎の絵に対する厳しい見方が、その文章のあちこちに現れています。
有名な「神奈川沖波裏」制作のシーンや
富嶽三十六景」と言いながら四十六枚あることなども紹介されています。

北斎が「富士超龍図」を書き始める時の、
弟子五助、栄との三人での会話に感動しました。
五助の「あたしなんぞ一人前じゃありません」から始まる
次の掛け合いが忘れられませんでした。

「まだ一筆も下していない束の間は、
 今度こそいい絵にできるような気がするのに、
 いざ仕上げてみたらいつもがっかりしちまうんです。
己の腕のほどを、己の絵に思い知らされます」

(中略)

「俺ぁな、五助。もう充分巧い絵師だ」

「はい」

「だが、巧いことと絵の奥義を極めることとは別物だ。
どうだ、巧いだろうってぇ絵には品がねぇし、
わざと無心を装ったような絵も見られたもんじゃねぇ。
俺ぁな、描けば描くほど、絵がよくわからなくなる。
ただ、それが苦しいからといって目指すところを
低うしたら、己の目論見よりさらにひどいことにならあ。
・・・・・・つまり、描き続けるしかねぇんだ」

(中略)

「そうやって己が及ばぬことを知っているから、
いい絵を描こう、巧い絵を描こうってぇ自らの欲を振り捨てて、また挑む。
その時がきっと道に上達する時なんだろうけれど、
それも本人にはわからない。後で振り返ってみて、
ああ、あの絵で何か一つ乗り越えることができたのかと思うだけで」

いいですねえ。このような場面に出くわし、
教えていただいた五助さんは本当に幸せですね。
米山先生にいただきました『富嶽三十六景』や、
偶然見つけた『北斎漫画』もおもしろく出てきます。
いろいろな事件が起こりますが、
読み終えてテンポの良さとさわやかな感じの残った一冊でした。



* 「副校長の読書散歩」とは?

参与の読書散歩 #62

新聞が教えてくれた本

Selected by安積秀幸参与先生

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新聞はいろいろな本を紹介してくれます。
コラム、記事等を読んでいて
書かれている方はよく本を読んでおられるし、
またいろいろなことをよく御存じで、いつも感心してしまいます。
第29回の「新聞記事がきっかけで」をはじめ、
新聞で知った本のことも多く書いてきました。

今回は、新聞の読書欄や記事、コラムで紹介された本です。
全くジャンルの違う本ですが、
どれも興味深く読むことができました。




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神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん
竹村優希 著 (双葉文庫



平成28年6月19日の神戸新聞「ひょうご選書」で紹介されていました。
タイトルの「神戸栄町」や「アンティーク」の言葉にひかれて
仕事帰りに本屋さんに寄って買いました。
本屋さんでは検索システムで探しても見つけることができず、
お店の方にお願いしました。

持っていたメモには「栄町」が抜けていました。
どおりで検索できなかったわけです。
電車の中で読み始めましたが、
もう少しで乗り越しをしてしまうところでした。

主人公「寛人」の両親が離婚した時、
古道具屋「アンティーク堂」を経営していた
祖父「万(よろず)さん」は、孫の「寛人」に、
  
  「俺のことはおじいちゃんと呼ぶな」
  「なんで?・・・・・・もう、僕のおじいちゃんでなくなったから?」
  「ああ。せやから俺はお前の友人になってやる。
  俺のことは万さんと呼べ」

と言います。それから10年。万さんは、
営んでいた古道具屋「アンティーク堂」を寛人に引き継がせて
亡くなってしまいます。
その時から「なぜ、僕が?」と考え続けます。

アンティーク堂に住み着いている修理屋の女性茉莉さん、
バイオリンの天才少年で生意気な北崎天馬くん、
砥峰高原で農場を営む谷原真二さん、真二さんの孫の凛ちゃん……と、
寛人はあたたかい雰囲気に包まれます。
また、寛人の元恋人の花沢咲さん、
茉莉さんにスカートの修理を頼みに来た芦屋の女性、
娘を亡くし、バラバラになったジグソーパズルを
元に戻すことを頼みに来た武井さん
と、登場人物はあまり多くありません。

寛人は、その人たちとのいろいろな騒動にまきこまれます。
そのひとつひとつの騒動が心あたたまる騒動なんです。
その騒動で、一歩ずつ寛人は答えを見つけていきます。
家族のあたたかさと「思い出」を感じる素晴らしい作品です。




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尾崎放哉句集
池内 紀 著 (岩波文庫



尾崎放哉を教えてくださったのは、鳥取のYさんです。
尾崎放哉は鳥取出身です。
尾崎放哉といえば「咳をしても一人」という有名な句を思い出します。
初めてこの句をお聞きした時は
「えー、これが俳句」と思わず言ってしまいました。
放哉の人生を読んでからは、「ふ〜ん」でした。
先ほどの「神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん」とは違う、
さみしさが漂う1冊です。

尾崎放哉は須磨寺にも滞在したこともあって、
時々新聞にも紹介されます。
平成26年6月6日には神戸新聞の正平調で、

「仏にひまをもらつて洗濯してゐる」

「氷店(こおりみせ)ひよいと出来て白波」

の2つの句が紹介されています。
また、平成28年4月29日の神戸新聞随想に、
たかとう匡子さんは、
須磨寺にある尾崎放哉の
句碑「こんなよい月を一人で見て寝る」を紹介されていました。
新聞で紹介されたときに妻と話をしましたところ、
「言いたいことがよくわかる。」という感想から、
しばらく尾崎放哉の話をしました。

この句集では、「こんなよい月を一人で見て寝る」は
大正14年の句として紹介されています。
明けて大正15年に「咳をしても一人」が紹介されています。
晩年に寺の堂守をしている一人だけの生活を、
多くの句に詠んでいます。
ほかにも、寂寥感あふれる句が紹介されています。

「ぽつかり鉢植えの枯木がぬけた」

「底がぬけた杓で水を呑もうとした」

「節分の豆をだまつてたべて居る」

ひとり暮らしと自然。
季節の移り周りを感じる句が並んでいます。

句の後に「入庵雑記」が掲載されています。
「島に来るまで」「海」「念仏」「鉦たたき」「石」「風」「灯」
の題のついた文が掲載されています。
鳥取のYさんからいただいた、編集者の池内紀さんが
鳥取で講演会をされた時の資料を探そうと思っています。




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誤解だらけの日本美術
小林泰三 著 (光文社新書



この本は平成27年12月4日に
「古美術の本来の姿最新技術で再現」
という見出しで紹介された記事で知りました。
俵屋宗達尾形光琳の「風神雷神図屏風」や
興福寺の阿修羅像等は経年変化に伴い
現在の色とは全くと言っていいほど違っていたと書かれています。
それをデジタル処理して再現した著者の考えや、
その過程が書かれています。
著者の発想が本当に興味深く、
通勤電車の中でも楽しく読むことができました。
ことさら造られた当時や書かれた当時の再現は
色を中心とした復元作業の話なので、
多くの素晴らしいカラー写真とともに読むことができました。

「制限だらけの鑑賞スタイル」では2014年4月に東京国立博物館
キトラ古墳壁画展に行かれた時の話が書かれています。
事前にスマートフォンでチェックしながら
待ち時間を短くする時間帯を調べられた著者は、
建物に入るのに1時間、館内で30分待たれ、
ゆっくりとしたベルトコンベアーのように進みながら
「立ち止まらないでください」という声に
「ただ見よ、後で考えよ。」という鑑賞に疑問を呈しておられます。

このような鑑賞法は、文化の熟成という意味ではよくない。
日本美術を鑑賞するにあたってもっとも大切なのは、
「時の移ろいに身を置く」ことだからである。
と言い切っておられます。全く同感です。
私は常々「本物をじっくりと手に取って感じる」ことが
大切だと思っています。
本物の美しさを肌で感じることと思っています。

著者は、デジタル処理をした文化財をじっくりと観察されています。
うらやましい環境です。
3Dプリンターで作成したものでもいいから、
本物とは違うことを前提に、
ゆっくりと手に取って鑑賞したいと思うのは私だけでしょうか。




* 「副校長の読書散歩」とは?

読む清涼剤、あります。

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気温が30℃を超える日が多くなってきました。

図書館のディスプレイは、夏本番に向けて準備万端です。

新着図書コーナーには夏雲と巻き貝。

YOMOYOMOスポットの掲示板も、夏の装いです。


2年生のYOMOYOMOスポット
2年生_20160706200330

こちらは3年生
3年生_20160706200346

(※画像をクリックすると、別画面にて表示されます。
  ズームアップしてご覧ください。)


もちろん、配架図書は日々更新中です。


1学期も残すところ2週間となりました。
この夏、傍らに置いておきたい本はどんな本ですか。

参与の読書散歩 #61

先生方に教わった本

Selected by安積秀幸参与先生

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前回は兵庫県播磨高等学校の
図書部員から紹介された本について書かせていただきました。
今回は、私が勝手に友人と思っている
すばらしい先生から紹介された本について
書いてみようと思っています。
多くの先生方がいろいろな本を読まれています。

今回の2冊は読んだ時期は少し離れているのですが、
読んでいて本当に
「人と人とのつながり」が大きく私の心に迫ってきました。





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ぼくたちに翼があったころ
タミ・シェム=トヴ 著
樋口範子 監訳(福音館書店


この本を読むきっかけになったのは、岩崎東里先生から
「この本は常森茂美先生のお薦めです。」と紹介されたことです。
常森先生は、「この続きが読みたい。」と
続巻の刊行を待っておられるそうです。

ポーランドワルシャワのクロフマルナ通92番地にあった
ヤヌシュ・コルチャック先生によって設立された「孤児たちの家」の話です。
この家は実際に設立されたもので、
素晴らしい考えのもとに運営された孤児たちの家です。

ポーランドに侵攻したナチによって、コルチャック先生は、
子どもたちとトレブリンカ強制収容所に収容されます。
列車に乗るとき、先生にだけ釈放許可証が届きますが、
その申し出を拒み子どもとちと強制収容所に旅立ちます。

主人公のヤネク・ヴォルフは盗みを常習としていた少年です。
あるとき袋叩きに遭い足を怪我してしまいます。
その後、このコルチャック先生の≪家≫に入ります。
少年はここで、ドクトルと呼ばれている先生のあたたかさにつつまれます。
母として慕っていた姉に見放されたと感じているヤネクは
その感情の中で揺れ続けます。

コルチャック先生の信念とあたたかさは、
ポーランドのナザレ校を訪問しました時
滞在中に感じたあたたかさと通じるものがあると思っています。
ポーランドでお世話になった通訳の方のお名前が
ヤヌシュさんだったことを思い出しながら読んでいきました。

この本を読み終えて、
タイトルの「ぼくたちに翼があったころ」、
僕たちがいる今はいつなのか、
また、「翼があったころ」は果たしていつなのか
考えさせられてしまいました。
常森先生と同じように続きを読めば
少しでもわかるのかなあと感じました。






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また、同じ夢を見ていた
住野よる 著 (双葉社


『君の膵臓をたべたい』を書かれた住野さんの次の本です。
岩崎東里先生にお願いして借りました。

「幸せとは?」と学校で出された課題に
小学生の小柳奈ノ花さんは一生懸命に考えます。
生意気な子どもですね、奈ノ花さんは。
しかし、奈ノ花さんの周りに登場するひとみ先生、
南さん、アバズレさん、おばあちゃん、
もちろん奈ノ花さんの両親もすばらしい人です。

読み始めた時には、「また、同じ夢をみていた」というタイトルは
なぜなのかよくわかりませんでした。

「それは絶対ダメ」と教えてくれた南さんと突然会えなくなり、
アバズレさんも同じように教えてくれたあと
奈ノ花さんの前から姿を消します。
いろいろとあたたかく教えてくれたおばあちゃんも、
友達の「ナー」と鳴く猫とともに消えてしまいます。
この小説全体が奈ノ花さんの夢だとすると、長い夢ですね。
奈ノ花さんは、夢に現れた、その時その時の未来の奈ノ花さん(?)に
いろいろと導かれて素晴らしい女性に成長します。
南さん、アバズレさん、おばあちゃんは、読んでいる私に
「未来の奈ノ花さん」であるようなないような感覚を
残してくれている構成に面白さを感じました。

同じ職業にあるひとみ先生は素晴らしい先生ですね。
できれば一緒の職場で勤務したいものです。

『君の膵臓をたべたい』の印象があまりにも強かったせいか、
帯に書かれているほどの感動は感じられませんでした。



* 「副校長の読書散歩」とは?

「YomoYomoSpot」活躍中です

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昨年度の終わりに、図書館内に新しく設置した
ブックトラックをご紹介しました。
→[2016年2月29日公開記事]

そして春休みの間に、
後藤先生が新たに3台の掲示板付きブックトラックを
作ってくださいました。
新年度から、各学年のフロアに1台ずつ、設置しています。

北村先生が制作していらっしゃる本校の図書新聞
YOMOYOMO」にちなみ、
後藤先生が「YomoYomoSpot」と命名してくださいました。

「YomoYomoSpot」の本は、
朝の読書の時間はもちろん、
休み時間や放課後に、自由に読むことができます。

配架している本は、
それぞれの学年に合ったテーマでセレクトしています。

1年生は、
高校生活のスタートにおすすめな
『スタートライン』(著・喜多川 泰/ディスカヴァー・トゥエンティワン
など、本の楽しさを身近に感じてもらえるような作品を中心に。

2年生は、
本校オリジナルの進路指導テキスト「ハーベストアワー」の
課題図書にもなっている
『手紙屋』(著・喜多川 泰/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を、
クラス数分用意しました。
そのほかに、自らの将来を考えていくときに、
参考になる図書(「仕事場がよくわかる!社会科見学」シリーズなど)を
多く揃えています。

そして3年生は、
受験勉強対策や就職関係の本を中心に、
「ほっとひといき」にぴったりな本も。
(冒頭の写真は3年生のYomoYomoSpotです)


現在、2週間に一度のペースで、
4階(2年生のフロア)と5階(3年生のフロア)を行き来して、
2年生と3年生の本を入れ替えたりもしています。
 
大きなボードのフェルト飾りや切り紙は、
図書館内と同様に、
季節や行事に合わせてチェンジしながら楽しんでいます。

「YomoYomoSpot」の運用を始めてから、
「もっとゆっくり読みたい」という生徒が気に入った本を手に、
図書館へ貸出手続きに来てくれるようにもなりました。

「YomoYomoSpot」の棚は、
これからさらにたくさんの本でいっぱいにしていきたいと考えています。


こちらは2年生のYomoYomoSpotです
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参与の読書散歩 #60

 図書部員に教えられて 
ビブリオバトルで紹介された一冊

Selected by安積秀幸参与先生


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3学期の期末考査の期間中のビブリオバトルの職員研修がありました。
今までビブリオバトルという言葉を聞いたことはありましたが
実際に体験したのは初めてでした。

期末考査期間中にもかかわらず、
そのビブリオバトルを実演してくれたのは図書部の生徒さんたちでした。

3冊の本の紹介がありましたが、一番印象に残っている本が
今回紹介する『君の膵臓をたべたい』でした。
しかし、そのタイトルが猟奇的な感じがして読むのをためらっていましたが、
平成28年4月17日の神戸新聞ブッククラブにも紹介されていましたので
読んでみることにしました。その紹介文には、

 タイトルだけを見るとホラー小説?と思いきや全く違って、(中略)
 タイトルからは想像できない、号泣する感動作なのです。

と書いてありました。

ビブリオバトルで紹介してくれた図書部員に感謝します。






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君の膵臓をたべたい
住野よる 著
双葉社



ハーベスト医療福祉専門学校で摺河校長先生が書かれた言葉を拝見しました。
  
優という字は、人を憂うと書いて、優(やさ)しいと読みます。
人の気持ちに寄り添うことは、優(すぐ)れていることです。

で始まっています。この本を読んでこの言葉を思い出しました。

皆さんの中にはもうすでに読まれた方も多いと思います。
大変人気の本のようです。
しかし、このタイトルだけを見られて
「何というタイトルなんだ?」と思われませんか。
私もしばらく読むのをためらっていました。

最初からクラスメイトの山内桜良(さくら)さんの葬儀の話で始まります。
しばらく読んでいくと桜良さんは不治の病で余命1年ということがわかります。
そのことを誰にも言わずにいたのですが
ふとしたきっかけでクラスメイトの志賀春樹君が知ってしまいます。

小説にのめりこんでいく自分と、
冷静に見ている自分とを感じながら読み進めました。
春樹君が、余命いくばくもない「君」に言葉をかけることは、
とても私にはできそうにないと思います。
余命のことを考えてしまい、妙に意識し過ぎ、
かける言葉を探しているうちに妙な間ができてしまうのではと
思ってしまいます。

途中で桜良さんが入院し、その入院が延長され、
桜良さんの言動に春樹君が不安を感じるあたりでは
冒頭の数ページを読み返していました。

春樹君が桜良さんに
「君にとって、生きるっていうのは、どういうこと?」
と質問します。そのやり取りが印象に残っています。

彼女は、「うっわー、真面目かよ」と茶化した後、
真剣な顔をして空を見つめて考えてくれた。
「生きる、か」と彼女が呟く。
それだけで、
彼女が死ではなく生を見つめていると実感できるそれだけで、
僕は心が微量ながら軽くなるのを感じた。(中略)
 「生きるってのはね」
 「・・・・・・・・・」
 「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、
  生きるって呼ぶんだよ」

彼女が書いた遺書を読んで涙が出そうになりました。
通勤途中の朝の電車の中で。




* 「副校長の読書散歩」とは?