兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #58

中国の古代哲学と日本文化

Selected by 安積秀幸副校長先生


黒





「陰陽五行」 *という言葉を聞かれたことがあると思います。

私は焼物が趣味で、多くの陶器や磁器を拝見してきました。
時々、易や八卦**にかかわる模様や絵が描かれているのを
見ることがありました。
最初は何げなく「ふ〜ん」と見ていましたが、
頭の片隅に残っていました。

そうしたなか、日本文化に関係する本ということで、
吉野裕子さんの書かれた本を
たまたま2冊読む機会がありました。
日本の文化を見ていくうえでの
別の切口を教えていただいた気持ちになっております。

また、茶道の中でも、「なぜ?」と思うことがあり、
その理由が分からないままのことが多くあります。
多くのことが理解できていない自分が居ることを感じています。

いつになるか分かりませんが、
じっくりと時間をかけて考えなければと思っています。



*「陰陽五行」
古代中国で生まれた思想。
春秋戦国時代(紀元前770〜同221年)頃、
陰陽と五行というふたつの思想が結びついて体系づけられたといわれる。
陰陽は、万物を「陰」と「陽」のように相反する形で存在するものとして捉え、
五行は木・火・土・金・水の5つの要素によって成り立つものとして解釈する。
陰陽五行の基本は、五行と十干(「甲・乙」「丙・丁」「戊・己」「庚・辛」「壬・癸」)の組合せである。

「易」「八卦

易は、太古からの占いの知恵が体系づけられた儒教の代表的な経典で、
「五経」のひとつにも数えられる。
八卦は、易において用いられる8つの基本図像のこと。
2種類の記号(爻:こう)3つの組み合わせからなる。








カミナリさま

カミナリさまは、なぜヘソをねらうのか?
吉野裕子 著(サンマーク文庫)



この本は新聞の読書欄に紹介されていました。
副題に『暮らしに息づく「陰陽五行」の秘密』とあります。
新聞の紹介文には、

正月に羽根つきをする。節分に豆をまく。キュウリ巻をカッパ巻と呼ぶ。
こうした今に伝わる行事や風習、言葉には
れっきとした根拠や理由があった。
古代中国の哲学である陰陽五行説を手がかりに、
言い伝えの謎を解いていく。

とあります。
タイトルの面白さ、紹介文の面白さにひかれて購入しました。

「陰陽五行」はあまり詳しくはないのですが、
木(もく)、火(か)、土(ど)、金(ごん)、水(すい)における
「五行相生」といわれるプラスの関係、
「五行相剋」といわれるマイナス関係、
さらに自然界のものが五行のどれに属するのか
といったことが解説されています。

また、目次には次々と面白い題が並んでいます。
十二支十干とのかかわり等から、
タイトルにある「カミナリさまは、なぜヘソをねらうのか」や
「桃太郎のサル・キジ・イヌは、何を表しているのか」
「浦島太郎はなぜ玉手箱をもらったのか」なども説明されています。

日本で昔から言われてきたことが、
今は言葉だけになっているものも多いのですが、
「なぜ」そのような事が言われたのか、
なかなか興味深い本との出会いでした。






陰陽五行

陰陽五行と日本の文化
吉野裕子 著(大和書房)



先に紹介しました『カミナリさまは、なぜヘソをねらうのか?』と比べて
もう少し詳しく書かれています。

中でも私の趣味の1つである茶道に関連した
「易・五行と茶の世界」や「易・五行と庭園」等は
面白く読むことができました。

茶道の本を読んでいますと時々
曲尺割(カネワリ)」という言葉に出会います。
点前をしていて、多くの茶道具をどの場所にどのように配置を考え、
置くのかということのようです。
今までも、分からずじまいで適当に読み飛ばしていました。

「カネ」とは「矩」のことですが、
「法則による割り出し法」という意味のようです。
このように説明されても何のことか分かりません。

この本では、茶道の古典の1つ『南方録』に
書かれていることが解説されています。
「カネワリ」は『南方録』の「墨引」の巻に書かれています。
「墨引」はあまりにも秘伝が書かれすぎているために
利休が廃棄を命じ、「墨で線を引いて消してしまった」という
由来から名付けられたと言われている巻です。
やはり読んでもあまり分かりませんでした。

『南方録』とこの本を畳の上に置いて
実際に道具を並べて考えながら、
何回もやってみないと分からないのでしょう。
「もっと茶道と陰陽五行を理解しなさい。」と
お叱りを受けそうなのですが……。




* 「副校長の読書散歩」とは?