兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #57

地域の歴史

Selected by安積秀幸副校長先生


読書散歩57 - コピー



兵庫県でも多くの市町合併が行われ、
私の住んでいる香寺町
「神崎郡香寺町」から「姫路市香寺町」に変わりました。

合併前には香寺町史も編纂されました。
新しくできた市町においては
いわゆる「ゆるキャラ」が多く作られ
地域のPRが盛んに行われています。

一方で、地域の歴史本も多く出版されているようです。
市町や地域の歴史研究をされている方々の
本を読む機会がありましたので紹介します。







河合寸翁リサイズ

姫路藩の名家老 河合寸翁
熊田かよこ 著(神戸新聞総合出版センター)



この本の副題には「藩政改革と人材育成にかけた生涯」とあります。

河合寸翁については、小学校で地域の偉人として習って以来、
姫路酒井家の家老として藩政に力を尽くしたということくらいしか知らず、
詳しく調べたこともなく済んでしまっていました。

藩の実収入の7倍余りに相当する
73万両にも膨れ上がった藩の借金を返済し、
酒井家の格をあげることに尽力し、
仁寿山校という名の学校を創設し、
頼山陽等有名な学者を招き講義を行うなど
人材育成にも尽くした人物です。

時の老中水野忠成は

「雅楽頭(うたのかみ)は毒にも薬にもなき者なれども、
家来に河合隼之助(寸翁)といふよき家老あり、
とかく家来はよきを持ちたきもの」

と言ったとあります。

巻末に関連の資料がまとめてあるのもまた、
この本を興味深く読めたことの理由の1つと思います。

藩の借金財政を改善するために木綿の専売制を導入し、
大坂を経由した販売から江戸での直売に切り替えることにより
収入を大幅に増やします。

他の藩からは「なぜ姫路藩だけ優遇するのか」と
幕府に申し入れがありますが、
将軍の娘との婚姻などを理由に
姫路藩への優遇は継続されます。

また、他に藍染や東山焼と言われている焼物、
蝋燭、塩、皮革、竜山石、絞油、「玉椿」という名の菓子などの
いわゆる殖産興業に力を入れます。

東山焼
*東山焼


玉椿は、藩主忠学と将軍の娘喜代姫との婚礼に合わせて
伊勢屋に作らせたとあります。
黄色い餡のおいしいお菓子で、
江戸時代には参勤交代時に
将軍への手土産に持って行ったということです。
今も姫路の銘菓になっています。

姫路の藍染は「かちん染め」と呼ばれ、
明治時代まで生産されていました。
江戸時代の袱紗が姫路市書写の里・美術工芸館に収蔵されています。
また、松影の模様をあしらった
高砂染」という名前の藍染も今日に伝わっています。

高砂染・数奇屋袋リサイズ
*高砂染による数寄屋袋


殖産興業に尽力しただけでなく、
藩の行政から身を引いた後にも
人材育成に尽力した河合寸翁は、
先を見通した素晴らしい人物と思っています。







多可の里風土記リサイズ

多可町合併10周年記念誌 多可の里風土記 〜62集落を訪ねて〜
多可町 著



この本は、兵庫県播磨高等学校で
「姫路学」を指導していただきました
埴岡真弓先生に頂戴しました。

この本の目次の後に「例言」として、

本文中の原稿は、
播磨学研究所運営委員兼研究員埴岡真弓氏に依頼して作成し、
編集は、多可町教育委員会教育総務課那珂ふれあい館にて行った。

と書かれています。

カラー写真もふんだんに入れてあり、
多可町のことが1ページに1話、
分かりやすくまとめられています。

各区の最初のページにはコラムが1つ設けられており、
中区は「山田錦」、加美区は「杉原紙」、八千代区は「敬老の日
という見出しでそれぞれ書かれています。
最初が酒米として有名な「山田錦」です。
八千代区が敬老の日の提唱の地だったことを初めて知りました。

地域の行事や神社仏閣について
地域とのつながりを中心に紹介されています。







なるほど但馬史リサイズ

なるほど但馬史
瀬戸谷晧 著(但馬歴史文化研究所)



この本が出版されたことを神戸新聞で知りました。
記事には、但馬地域の書店で販売されているとありました。

但馬は本当に歴史的にも文化的にも素晴らしい地域です。
県立豊岡高等学校赴任中の2年間に、
多くの方に但馬について教えていただくことができました。

読んでみたいと思い新聞に書かれていた連絡先に電話しました。
「お送りしてもいいのですが、送料がかかりますので、
 但馬に来られた時にでも書店で……。」ということでした。
できるだけ早く読みたかったので、友人に頼んで送ってもらいました。

表紙のコウノトリの写真の中に、小さな文字で
「古代から 現代 未来へ」と書かれています。
目次を見ると、今まで教えていただきました
多くのことが掲載されていました。

美しい写真や楽しい絵とともに
1ページに1話をまとめられており、
古事記1300年」のところでは、私の好きな
伊豆志袁登賣(いづしをとめ)藭の藤の花の話も
素晴らしい絵とともに紹介されています。

橘の実を持ち帰った田道間守(たじまのかみ)の話も、
お菓子の神様として有名な中嶋神社の鳥居の写真と
一緒に紹介されています。

古代の話だけでなく北但大震災からの復興も取り上げられ、
但馬史を幅広く紹介されています。







高野の風リサイズ

大字誌 高野の風
香寺町 田野自治会 著



この本は、私の住んでいる自治会が刊行しました。

タイトルの「高野」は村の高野神社の名前から取っています。
播磨国風土記にも出てくる由緒ある神社です。

以前自治会の役員をしていました時にこの本の刊行の話が出て、
月に2回ほど担当者が集まり編集作業が始まりました。
自治会役員を外れたこともあり、
この編集作業からも遠ざかっていましたが、
先日自治会の各戸に配布されました。

多くの方から寄せられた意見の調整など
大変な作業だっただろうなと思います。
編集に携わられた方の御苦労に感謝したいと思います。

目次を見ますと、
「ふるさとの由来」、「遺跡と古墳」、「社寺と信仰」、
「史跡と争乱」、「生活の移り変わり」、「水利と農業」、
「民俗行事と伝説」などが
関連文書や史跡の写真とともに解説されています。
地域を知る貴重な資料です。





* 「副校長の読書散歩」とは?