兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #46

アジアの中の日本

Selected by 安積秀幸副校長先生


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近頃、テレビでも新聞でも中国を始めアジア各国との関係が
毎日のようにニュースに取り上げられています。
中国や韓国とは政治的には、領土問題がよく取り上げられますが、
一方で相互の人々と積極的に交流すべきという意見も報道されています。

先日も外務省が発行した
竹島――竹島問題を理解するための10のポイント』 という小冊子を読みました。
様々な問題はありますが、古来日本では
中国などアジアの国々との文化交流が盛んに行われてきました。

今回はアジアの国々との交流に関する本を読んでみました。







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砂漠に埋もれた文字――パスパ文字のはなし
中野美代子 著(塙新書



パスパ文字に興味を持ったきっかけは、
平成27年1月24日の神戸新聞でした。

たつの市相生市にまたがる
標高261メートルの光明山(こうみょうせん)で採集された
陶片に中国、元(げん)の時代に使われた
パスパ文字」が刻印されているのが見つかった
という記事を読んだからです。

歴史で分からないことがあれば、米山徹先生に
「何か資料を持っておられませんか。」とお聞きし、
あわよくばその資料のコピーや資料そのものをいただこうと思っています。
今回も「何かパスパ文字に関する本は持っておられませんか」
とお聞きしましたが、返ってきたのは、「持っていないよ。」という答え
と先生が調べられた内容が書かれた手紙でした。

インターネットでパスパ文字の本を検索したところ
この本があることを知り、注文をして取り寄せました。
この本は、ちくま学芸文庫でも出ているそうです。

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*ちくま学芸文庫


中野美代子さんの本は、第9回でも紹介しましたが、
本当に幅広くまた詳しく調べておられることに驚いています。

読み始めたものの最初の「? モンゴル人と文字」、
「? 近代におけるパスパ文字の発見と研究」、
「? 帝師パスパ」あたりまでは、
パスパ文字の歴史として読めたのですが、
「? パスパ文字の組織」になると、漢字では表現できない
表音文字としてのパスパ文字を解析するため、
中国語の発音が分からない私には難しすぎて分かりませんでした。

しかし、巻末のパスパならびに関連文字の字母表には興味がわきました。
パスパ文字で書かれた言葉は、字母表の組み合わせから
当時の読み方は推測できても、そこから先へ全く進めないことが分かりました。

また、このパスパ文字がハングル文字につながっていることなどが
「? パスパ文字の戸籍調べ」に書かれており、
新たな発見をすることができました。
機会と時間があれば、この本を見ながら、
光明山で発見されたパスパ文字を読んでみたいと思います。






東アジアの日本書紀

東アジアの日本書紀――歴史書の誕生
遠藤慶太 著 (吉川弘文館 歴史文化ライブラリー)


ある時、岩波文庫の『日本書紀』を、
神戸のJR元町駅から神戸駅までの間の高架下の古本屋で見つけました。
買おうと思って次に神戸に出かけたときには、
既に売れてしまっていて買うことができませんでした。
そんな思い出のある『日本書紀』に関する本を旭遼介先生からいただきました。

著者は、旭先生の大学の恩師だそうです。
プロローグのタイトルが、「書物としての『日本書紀』」となっています。
日本書紀』を資料として読むのではなく、書物として読むとあります。

百済新羅高句麗など東アジアの国々との関係を、
その国々の歴史書や日本書紀の記述から読み解き、
年代の特定などについても書かれています。
私たちが日本史で習った事件や人が出てきますが、
聞いたこともない人の名前も出てきます。

一番興味深く読んだのは、「仏教伝来の記事をめぐって」の章です。
現在は、仏教が伝来したのは『元興寺縁起』『上宮正徳法王帝説』による
538年という見方が主流で、『日本書紀』の記述は疑問視されています。
しかし、朝鮮半島の歴史的な経緯を踏まえると
日本書紀』の記す552年も信憑性が出てくると書かれています。

第8回で紹介しました石上神宮の七支刀は、
平城遷都1300年記念事業の一環として公開されました。
私も、申し込みをして幸いにも抽選に当たり、妻と二人で拝見しました。

七支刀が百済からもたらされたのは、
日本書紀』では252年とされていますが、
史実としては372年であるようです。
日本書紀』は、意図的に120年(干支二回り分)
年代をさかのぼって記述しているといわれています。

この“干支二回り分”を修正をすれば、
この七支刀の記述だけでなく多くの記録が、
高句麗広開土王碑」、『三国史百済本紀』、
日本書紀』と一致すると書かれており、
非常に興味深く読ませていただきました。







* 「副校長の読書散歩」とは?