兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #40

不易と流行

Selected by 安積秀幸副校長先生


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教育の世界においても「不易と流行」という言葉をよく聞きます。
時代の流れの中で変わってはならないこと「不易」と、
時代の流れに従って臨機応変に対応しなればならない「流行」が
絶えず求められています。

兵庫県播磨高等学校は、
「教養」をこの不易の1つとして推進しています。

今回は、「不易と流行」の「不易」に関する本を紹介します。






日々

日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ
森下 典子 著(飛鳥新社



私の手元に黄檗山主道元仁明管長の書かれた、
この本の題名と同じ言葉の掛軸があります。

そのこともあり、この本を岩崎東里先生が
平成26年12月10日発行の「図書だより12月号」に
紹介されましたときに、読んでみようと思いました。
さっそくお願いして図書室からお借りして読み始めました。
読み終えて、茶道に興味のある人には是非読んでいただきたいと思いました。

なかなかテンポよく読み進めることのできる本でした。
お茶を習い始めてから現在までの
お茶に対する考え方の変遷を通じての
著者自身の人生録でした。

私も大学生の時にお茶を習い始めて
学生時代はお茶に没頭していたと
言っていいような生活を送りましたが、
就職してからはお茶の先生とも遠く離れ、
茶道部の顧問として時々顔を出す程度でした。
現在でも点前はほとんどしませんが、
休みの日には茶を点てて妻と一緒に飲んでいます。

季節の移ろい、自然とのふれあいはそれなりに感じていますが、
著者森下さんのように自然と一体となったような
感覚になったことはありません。
時々私は機会があれば、生徒の皆さんや、先生方には
「見るという気になってみないと何も見えませんよ。」と話をしていますが、
森下さんのように意識しなくても見える境地になるには
まだまだ遠い道程があるようです。

茶会や茶事の様子も書かれていますが、
書かれている背景や考え方は頭では分かっているのですが、
その雰囲気がいまだに好きになれません。
もっともっと修業が必要なようです。

「日々是好日」とかかれた軸を
今晩あたり掛けて眺めてみようかと思っています。


日々文庫
新潮文庫からも発刊されています。








幸田家

幸田家のしつけ
橋本 敏男 著(平凡社新書



幸田露伴は大好きな小説家の一人で、
学生時代には文庫本を見つけては買って読んでいました。
最初に読んだのはやはり『五重塔』でした。
大学構内の生協で★1つ50円でした。

就職してからも、『露伴全集』が刊行されることを知り、
時間をかけて全巻そろえることができました。
と言いながらもほとんどが「つんどく」状態です。

現在は姫路市図書館の職員をされている方で、
私が住んでいる町の図書館で館長をされていた方から
寄贈してほしいとの話がありましたが
お断りして、今も家の本棚に並んでいます。

この本は、鳥取のYさんから送っていただいた何冊かの1冊です。
幸田文幸田露伴から教え込まれた
「しつけ」について書かれています。

著者は、露伴が晩年住んでいた家の近所に住んでおられました。
露伴の葬儀を目の当たりにしたことから親近感を覚えて
幸田露伴幸田文の考え方や見方、教育の仕方を
延々と述べておられます。
露伴の考えをと言いながらも、
著者の考えを露伴のしつけを通じて書かれています。

本物を実際に見せて教えることと、
体で覚えなければならないこと、
つまり知識と体得は「教える」ことができるが、
もう一つ「育む」という大切なことがあると書かれています。
露伴の具体的な行動を紹介しながら、
どのようにすればいいかを考えさせられます。
露伴の一本筋の通った考えと行動に素晴らしいものを感じました。

兵庫県播磨高等学校も長年「教養」を導入し、
「形から入って心を育てる」教育を推進していますが、
参考にすべきことが多く書かれているように思います。






国家の品格

国家の品格
藤原正彦 著(新潮新書



著者の藤原正彦さんは皆さんよく御存じの通り、
作家新田次郎藤原ていさんの次男です。
数学者であり、独自の考えを書かれています。
姫路文学館の館長になられて、姫路とのかかわりの深い方です。
本校でも、講演をいただいたこともあるようです。

藤原正彦さんを推薦されたのは、以前に紹介した焼物の師匠です。
日本文化を大切にと常に言われている師匠は、
焼物の専門家ですが、
焼物だけでなく日本古来の模様や意匠にも歴史にも非常に詳しく、
いつも教えていただいております。
また、日本の文化を調べるにあたっての視点なども、
「これはこのような見方をすれば面白い。」と
見る視点を教えていただきます。

もう一人、先日学校へ来られ、
生徒に国際交流について話をいただいた方も、
国際交流をするには英語を話すことより、
日本語、日本の歴史等をよく勉強して、
自分を育んだ文化について自信を持って
諸外国の方と話ができないとだめだと
おっしゃっていました。

私も、生徒を引率して、何回か海外へ行きました。
その国の方と話をする機会もありましたが、
趣味の一つである茶道の話をし、
考え方や美について自分なりの考えを話すことによって
相手の方もきちんと対応いただけることが多かったように思います。

現地の日本人のガイドをしていただいた方も、
生徒には
「英語が話せてもだめ、
自分の考えや自分の国の文化について話せないとだめ。」
と教えてくださいました。
まさに、この本に書かれていることを直接教えていただき、
体験することができました。

たどたどしい英語ではなく、
もう少し自分の思っていることを
英語で話ができるように勉強をしてみようと思っています。




* 「副校長の読書散歩」とは?