読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #39

副校長の読書散歩

みをつくし料理帖シリーズ(その2)
Selected by 安積秀幸副校長先生

TOP_201411281530135c0.jpg


みをつくし料理帖を続けて紹介しましょう。

この小説には、さりげなく江戸時代の実在の人物が出てきています。
いつも「つる家」で文句をいいながら食事をする清右衛門は、
南総里見八犬伝』の作者である滝沢馬琴と思われます。
「りう」さんの一言で分かります。

清右衛門について食事に来た画家の辰政(ときまさ)は、
店先の地面に絵を描いている子どもの太一に
貴重な自分の著作の画集を惜しげもなくやってしまいます。
この本はたぶん「北斎漫画」でしょう。ですからこの画家は葛飾北斎と思われます。

このような人物をちりばめながら話は進んでいきますが、
この先どうなるのかわくわくしながら読みました。

今回は完結した全10巻、既に紹介しました『八朔の雪』から『心星ひとつ』以外の
残りの4冊とシリーズで取り上げられた料理のレシピをまとめた
『みをつくし献立帖』を紹介します。







夏天の虹

夏天の虹――みをつくし料理帖
高田 郁 著(角川春樹事務所 時代小説文庫)



恋より料理人の道を選んだ主人公の澪は、嗅覚とともに味覚も失います。
しかし、周りのあたたかい支えにより、嗅覚、味覚の休んでいる間に、
料理に使う器などいろいろと勉強をします。
そのことが最終巻の伏線にもなっているようです。
あることがきっかけで嗅覚と味覚を取り戻しますが、
涙するところも多くありました。

ところで、ツバメは、
「虫食って 土食って 渋ーい 虫食って 土食って 渋ーい」
と鳴いているとご存知でしたか。
人情あふれる展開を、軒先に巣を作ったツバメの描写が
さらに引き立てているように思います。





残月

残月



老舗ののれんを自分一代限りと腹をくくった二人。
その決断に至る葛藤、
周りの人々のあたたかい気持ちに甘えようとする心、
心の揺れの何とも言えない展開が続きます。

みをつくし料理帖」は、
時々「えっ!」と思ってしまうような料理が出てきます。
この回でも多くの料理が出てきますが、
「面影膳の中の『謎』」は考えてもみなかったものです。
あまり手もかからないように思えますので、
一度休みの日に作って夫婦二人で味わってみたいと思っています。





美雪晴れ

美雪晴れ



悲しい出来事の多かった澪の周りにも
幸せの花が咲き始めた展開です。

料理人としての二つの道、
師として慕う旦那さんのような有名な料理人となることと、
お客さんの喜ぶ顔を間近で見られる
気安くて心に近い料理を作り続けるのかに迷います。

いつもあたたかく澪を見守っている医師源斉からの
「食は、人の天なり」という一言で自分の進むべき道を決めます。
特別収録も伏線となってどのように話が進んでいくのか楽しみです。





天の梯

天の梯



このシリーズの完結編を、
登場人物の相手を思うあたたかい気持ちに涙しながら読みました。

幼馴染と再び大坂で暮らすことになった主人公澪ですが、
何と粋な計らいを摂津屋さんはされたのでしょう。
屋号に「摂津」という地名を使っておられる方だからこそ
できたのかもしれません。
「こんな落としどころもあるんだなあ」と感心してしまいました。

巻末の江戸と大坂の料理番付表がいいですね。

先日、このブログでお世話になっています鈴木朝子さんから、
「最終巻に出てくる手のかかる料理を作ってみました。」
とメールをいただきました。
どんな料理を作られたのか、お話を聞くのが楽しみです。





献立帖

みをつくし献立帖



レシピのページはあまり熱を入れて読みませんでしたが、
合間に書かれているエッセイや
「つる家」の間取り図は興味深く拝見しました。
冒頭の紹介文で書きました「清右衛門」が、
馬琴であることのヒントも書かれていました。

澪と野江の幼いころのひとコマの「貝寄風(かいよせ)」もいいですね。
シリーズを通して、揺るがない澪と野江の互いを思う気持ちは、
奉公人になっても「お梅」や「お松」ではなく
「澪」と「野江」という名前で呼ぶという一節に
よくあらわれていると思います。

高田郁さんも本当に本がお好きなようで、
「心に屈託を抱えたまま家路に就きたくない時、
私は本屋さんを探します。
紙の匂いを嗅ぎ、紙の手触りを味わって本を選ぶうちに、
何時しか心は平静を取り戻します。」
という一文に、私は素直に納得してしまいました。





* 「副校長の読書散歩」とは?