兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #33

故郷姫路の話題の2冊

Selected by 安積秀幸副校長先生

姫路TOP




姫路城大天守保存修理の工事も最終段階になりました。
毎日、以前より白い天守閣を電車の窓から見ながら通勤しています。

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*大天守保存修理工事中の姫路城


平成27年3月27日からは、再び一般公開される予定になっています。
近くに住んでいますと「いつでも行ける」という思いから
あまり足を運びませんが、これからも
世界中から多くの方々がお越しになることでしょう。

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今、姫路は本当に黒田官兵衛一色という感じです。
今回はたまたまこの姫路に関する
2冊の本をいただいたことから読み始めました。

平成26年、平成27年と姫路が注目されることが続きます。








戦国の知将

姫路が生んだ戦国の知将 黒田官兵衛
姫路獨協大学播磨総合研究所 編(神戸新聞総合出版センター)



この本は学校法人獨協学園が、NHKドラマ放映を祝して、
はりま歴史講座「姫路が生んだ戦国武将・黒田官兵衛」を開講し、
全10回の講座の講義録として刊行されたものです。
平成26年8月17日の神戸新聞の読書欄
「ひょうご選書」にも紹介されています。

黒田官兵衛天下盗りの野望」
福岡藩の藩祖・黒田官兵衛と初代藩主・黒田長政
「黒田家の目薬と廣峯神社」「文学に描かれた黒田官兵衛
「毛利家と播磨の豪族たちの帰趨」「黒田官兵衛と織豊系城郭」
豊前国中津の黒田官兵衛」「官兵衛を支えた家臣団・黒田二十四騎」
黒田官兵衛に学ぶ人間学」「軍師官兵衛知られざる実像」
黒田官兵衛を語る――シンポジウム」――と幅広い内容で
様々な官兵衛像を知ることができました。

近頃、姫路市内ではどこに行っても、
黒田官兵衛ばかりで少し食傷気味な私です。
その中で興味を持ったのは、
「文学に描かれた黒田官兵衛」の中の一節です。

津軽藩4代目藩主の津軽信政から
思い出や噂話を聞書きした「信長公御譚」に、

  中国大返しの時に秀吉が暗い夜道を一心不乱に取って返している最中、
  誰かがその手をむんずと取って
  「藤吉郎、信長公が御生害されて嬉しかろう」と言った。
  真っ暗ですから顔が見えないけれども、
  秀吉には声でそれが官兵衛と分かったということだった。

とあります。それから14年後、

  慶長元年(1595)、
  大地震の際に、秀吉の建てた伏見城の御屋形が倒壊して、 
  秀吉が死んでしまったという噂が立ちます。
  もちろん秀吉は庭に難を逃れている。
  やがて夜が明けると、家来や大名たちが参内して、
  無事のお祝いを申し上げる。
  少し後れて官兵衛も秀吉の前に出てお祝いを申し上げると、
  秀吉は「昨夜は俺が死んだと聞いて嬉しかったろう」と言った。
  官兵衛には返す言葉がなかった。

と書かれていることが紹介されています。
官兵衛が天下を取りたかったという話と合わせて、
官兵衛と秀吉のかかわりのひとつとして
おもしろく読ませていただきました。

まだ少し、黒田官兵衛の話題が姫路では続くと思いますが、
どのような新しいことが発見できるのか楽しみにしたいと思っています。









姫路100

姫路城100ものがたり
中元孝迪 著(神戸新聞総合出版センター)



この本は神戸新聞で2009年1月から2012年12月まで広告スペースに
毎月2回連載された「白鷺の美翔――姫路城100物語」を加筆修正して
1冊にまとめたものと、あとがきに書かれています。

「歴史の中の姫路城」「素顔の城郭――『美』の秘密」
「城主列伝」「城下町『人模様』」の4部構成になっています。

「歴史の中の姫路城」「城主列伝」「城下町『人模様』」では
時間の流れの中での姫路城、
「素顔の城郭――『美』の秘密」では
空間的な広がりの中での姫路城が
分かりやすく説明されています。

見開き2ページに1つの話で構成されていることも
わかりやすく読める理由の一つでしょう。

空間的な広がりと時間的な流れという四次元で展開される説明、
それに加えて姫路城にかかわる人――と、
5つの次元で姫路城をとらえたこの本は素晴らしいと思います。

本当に面白い逸話を教えていただきました。
織田信長池田輝政が乳兄弟だったこと、
姫路城と江戸城の構成が似ており、
姫路城が左渦郭式、江戸城が右渦郭式であることから、
城郭を設計した人たちのつながりが紹介されています。

姫路城の城主は通説と新設があるそうです。
通説では48人、新説でも37人、
江戸時代に限っても33人もの城主がいたことや、
その数は全国一であったことを初めて知りました。

「城下町『人模様』」では、
千姫、酒井抱一、鈴木其一等と歴史に登場する人物だけでなく、
城下の三人孝女、お菊、お夏・清十郎など
面白く読ませていただきました。






* 「副校長の読書散歩」とは?