兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

世界で一番短い手紙:フランスの文豪であるビクトル・ユーゴーが

『ああ無情』(『レ・ミゼラブル』)という本を出版した時のことです。
売れ行きが心配だったユーゴーは、出版社に問い合わせました。
その手紙が「?」です。そして出版社の返事が「!」でした。









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蜜蜂・余生
中 勘助 著(岩波文庫



中勘助は、灘高等学校の橋本武先生が
銀の匙』を授業で取り上げられたことで有名です。

平成25年6月17日の読売新聞の「先人を訪ねて」で中勘助が取り上げられ、
銀の匙」の実物の写真も出ていました。
懇意にさせていただいている花隈のお菓子屋さんで
同じ実物を見せていただきました。

この本を読むきっかけになったのは、鳥取のYさんに
第24回で紹介した『城の崎にて』の豆本
お送りしたお返しにいただいたことです。
Yさんにはいつも少し違った視点でいろいろなことを教えていただきます。

中勘助は、橋本先生が亡くなって『銀の匙』が
新聞などでもさかんに取り上げられ少し気になっていました。
「機会があれば読んでみようかな」と思っていた矢先に、
岩波文庫の『蜜蜂・余生』が届きました。

「何でわかるのかなあ」と思いながら、
インドネシア研修旅行の引率の飛行機の中や宿泊先で読みました。
表紙には
「半痴半狂の長兄を家長とし、紛糾のたえなかった中家を一身に背負って
“家”の犠牲となった兄嫁。孤独でやさしかった兄嫁の晩年をしのぶ随筆」
と書かれています。
その兄嫁への「いたわりと思いやり」が、
兄嫁の死の前後の日々の日記の形で書かれています。

一生懸命に働き、家を支えて亡くなった兄嫁を
ミツバチの働き蜂に見立てて
「蜜蜂」と名付けて出版されたことも書かれています。

時には兄嫁への語り口調、時には兄嫁の様子の記述という書き方ですが、
全体に兄嫁への思いが絶えず流れています。
自分の妻の記述は全くありません。
というのも、兄嫁の死後自分一人で兄の世話をすることの困難から
結婚することを決意するのですが、
結婚披露の当日に兄は亡くなったということです。
妻とは、中勘助のやさしさがあふれる家庭をもったようですが、
結婚前の生活での優しさがあふれる作品です。

「余生」は、出版した「蜜蜂」を贈った方々からの礼状が続きます。
その礼状では異口同音に中勘助
兄嫁への思いやりを誉められています。

最初に解説を読んだ時には、兄嫁への思いが
これほど延々と綴られているとは想像もしませんでした。
現在の私の感覚ではちょっと理解できないくらいに
兄嫁末子さんへの思いが綴られています。

もう少し、中勘助を読んでみようかなという気持ちになっています。





* 「副校長の読書散歩」とは?