兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

2 同心:

江戸幕府における下級の役人のこと。
次の『浪花ふらふら謎草紙』にも出てきます。





ふらふら謎草紙

『浪花ふらふら謎草紙』
岡篠名桜(おかしの なお) 著 (集英社文庫)



主人公「花歩」は、
幼い時に父親と旅籠で宿泊したまま、置き去りにされます。

旅籠夫婦に育てられている花歩は、
置き去りにした父親の残した風景画の描かれた場所を探しながら、
大坂中を歩き回ります。
その行動が書名の「ふらふら」になっています。
わかっていながら、ふっきれないよそ者という感じ。

しかし、幼馴染の同心に連れられて
遅く帰ってきた時の養母の登美の行動……

  戸口に手を掛けるよりも先に戸が開き、
  「花歩!」という登美の声と同時に頬をはたかれ、強く抱きしめられた。
  「こない遅うまで ――心配させて!」
  登美の涙声が花歩の肩に押し付けられる。
  頬よりも胸が痛い。苦しいのに、あたたかい。
  「堪忍、おかあはん」

……というできごとから花歩の行動が変わってきます。

幼馴染の同心の、立場上、素直に表に出せないながら、
花歩へのあたたかい思いやりが感じられる展開が続きます。

『狸穴あいあい坂』とはまた違った
人のあたたかさが感じられる小説です。



* 「副校長の読書散歩」とは?