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兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #16

副校長の読書散歩

      

「心に残る一言」に出会った小説2冊

selected by 安積秀幸副校長先生

#16TOP


「人間到所有青山」という言葉があります。
私は、「人間到所有先輩」と思っています。
少し気心が知れた人には、よく「先輩」と声をかけます。
当然、読んだ本の著者、登場人物も諸先輩の一人です。

多くの本からいろいろな一言を教えていただきますが、
今回はそのような一言にであった小説を紹介します。




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『ものがたり 史記
陳舜臣 著(朝日文庫



私の手元に「史記」に関する本が三冊あります。
一冊がこの『ものがたり 史記』です。
もう一冊は平凡社版中国の古典シリーズの『史記』です。
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もう一冊は台湾の文化圖書公司で写真印刷された
『國學基本叢書 原版影印 史記』です。
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恩師米山徹先生から、学生時代に
京都百万遍近くの中国書籍の専門店で購入された話を伺い、
帰郷する際に京都に立ち寄り購入しました。
もちろん木版本をそのまま印刷したものですから、字も小さく、
読んでもよくわからず、平凡社の『史記』を購入しました。
上中下の三冊に分かれていますが、最後まで読んでいませんでした。

『ものがたり史記』は子どもの本棚の整理をしているときに見つけました。
子どもが「史記」に興味があったのかどうかわかりませんが、
今度会った時に聞いてみようと思っています。
早速、通勤電車の中で読んでみました。

またまた「あとがき」の話ですが、
史記」は中国の二十五冊の正史の筆頭であると言われています。
歴史上の人物の表現の仕方から、著者陳舜臣氏は
司馬遷」は優しい人と書いておられます。
明治以前の日本では、「史記」は教養人の必読書であり、
源氏物語にも「史記」が反映されていると書かれています。

「須磨帰り」にもいかなかった私は、
史記」も持っていながらまともに読んでいません。
このあとがきの言葉にショックを受けています。

高校生の時に漢文で習った、股くぐり(※注)で有名な韓信や、
「臥薪嘗胆」などの話が次から次へと出てきます。
これを機会に「史記」に挑戦し、
司馬遷」の、人の捉え方にも触れてみたいと思っています。

【注】
韓信とは、漢の天下統一に功績のあった名将。
若い頃、町のごろつきに喧嘩を売られたものの、大志を抱く身であったため争いを避けた。
股の下をくぐらされるという屈辱をあえて受けた韓信は、
その後 大成し、天下統一のために活躍した――という故事から。
将来に大望のある者は、目先のつまらないことで争ったりしないという戒め。




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『越前 古窯の人 −水野九右衛門―』
上坂紀夫 著 ((株)福井県教科書供給書)



私の趣味のひとつは茶道です。
焼物にはもともと興味はあったのですが、
以前勤めていました豊岡の学校の同窓会である人に
「安積さん、但馬には出石焼という素晴らしい焼物がある。
せっかく但馬に来たんだから出石焼の勉強をしませんか。
一つを徹底的に勉強すれば、おのずと他の物もわかってくる。」
と声をかけられました。

出石焼と言えば白磁の器しか知らなかった私に
いろいろと教えてくださいました。
この本はその焼物の師匠からお借りしたものです。

今では日本の六古窯の一つに数えられている越前焼ですが、
その研究に一生をささげた人、水野九右衛門の伝記小説です。
著者は長く水野さんと交友のあった人で、
「伝記小説は、事実と虚構のかねあいがむずかしい。」
とあとがきに書かれています。

お借りした本は、著者から謹呈されたもので、
サインも書かれています。
著者から謹呈された理由。
それは私の焼物の師匠が登場されるからです。
今や重要文化財になっている表紙の甕を発見し、
越前焼を研究されている水野さんに
その甕の購入をすすめられたと書かれている方です。

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[越前自然釉壷](鎌倉時代
出典:http://event.rakuten.co.jp/area/fukui/tieup/20100201.html
本書の裏表紙には、甕に書かれている文字を拓本でとったものが掲載されている

ほんとうは水野さんから
「見せて欲しい。」という依頼があり、
お伺いされたとのことです。
その時に価格の話も出たようで、
本に書かれている価格より高かったそうです。
このあたりが、「事実と虚構のかねあい」なんでしょうか。

稼業も何もかもそっちのけで、
陶片等の越前焼収集、窯跡の発掘、
その活動を支えられた人々の
あたたかいふれあいがにじみ出ています。

よく、これだけ長く一生懸命に
研究を続けられたと感心するとともに、
家族の理解がすばらしいと感じます。

この本をお借りした焼物の師匠の
「一つを徹底的に勉強すれば、おのずと他の物もわかってくる。」
という言葉をしみじみと感じた一冊です。




* 「副校長の読書散歩」とは?