兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #15

      

あたたかな気持ちになれる小説2冊

selected by 安積秀幸副校長先生

novel1013


第2回目にドキュメンタリーを取り上げましたが、
今までテーマとして小説は取り上げていませんでした。

私は江戸時代の文化に興味を持っており、時代小説もよく読みます。
学生時代には山本周五郎に凝っていましたし、
藤沢周平山本一力等よく読んだものです。

最近では図書室で借りた畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズも
大変面白く次から次へと読みました。
人情話にはいつもほのぼのとした心遣いを感じます。
時代小説だけでなく小川洋子さんの
博士の愛した数式』はテレビでも見ました。
梨木香歩さんは『西の魔女が死んだ』から
『からくりからくさ』『裏庭』等続けて読みました。
少し違った怪談話に「ふーん」と思ったものです。



10150


『本日は、お日柄もよく』
原田マハ 著(徳間書店



十年以上前になりますが、近畿地方の府県の教育研究所の先生方と
全国レベルの教育研究に携わったことがあります。
そのメンバーはとにかくユニークな方々ばかりなんです。
今でも少なくとも年に一回は府県持ち回りでお世話をし、
楽しいひと時を持っています。

9月の上旬に、その会が神戸で持たれました。
既に退職された方、現役の方と様々ですが
お互いに思ったことを語り合っています。
その席で京都の国語の先生からこの本を紹介されました。

事の始まりは、和歌山の先生の
「職員の結婚式でのスピーチにあがってしまって…。」
という一言でした。
京都の先生は
「この小説はスピーチライターが主人公だけれど、
話し方を教えてくれる本」
と絶賛されました。
ということで学校の帰りに書店に立ち寄り購入しました。

読み始めてすぐに吹き出してしまいました。
主人公は幼馴染の結婚式の披露宴で、主賓の挨拶が眠くて、
スープの皿に顔を突っ込んでしまいます。
しかしその後、素晴らしいスピーチに出会います。
そこからスピーチの一言が人に感動を与え、
行動を起こすきっかけになるのだと感じることができます。

第1回で紹介しました『人を動かす! 話す技術』と通じています。
スピーチを切り口とした二世議員の誕生の話ですが、
基本的なコンセプトをどう決めるのか、それを達成するための作戦、
つまり1回1回のスピーチをどのように作るのか、
時間に追われる中でどう変えていくのか。
最後まで、展開のおもしろさと、
人々のあたたかい気持ちがほんのりと感じられる小説でした。




10151


『八朔の雪 みをつくし料理帖
高田 郁 著 (角川春樹事務所)



図書室にNIE事務局から提供されている新聞を見ていて
この本の広告を見つけました。

もともと江戸時代の時代小説が好きなこともあり、
読んでみようと思い立ちました。
岩崎東里先生とその話をしたところ、
市の図書館から借りてくださいました。

いつものことですが、特に江戸時代を舞台にした人情話を読んでは
いつも人が人を思いやる心に、心を打たれます。
この本はシリーズ名に「みをつくし料理帖」とあるように
料理をテーマにした人情話です。食べ物が好きな私は、
このシリーズ名にひかれたのかもしれません。
途中幾度となく涙が出そうになりました。

鰹田麩(かつおでんぶ)、心太(ところてん)、
茶碗蒸し、酒粕汁とおいしそうな名前が続きます。

とりわけ面白いのは、それぞれの料理のレシピが
巻末に書かれていることです。
いつになるかわかりませんが、作ってみたいと思っています。




* 「副校長の読書散歩」とは?