兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #14

       

童謡・唱歌を楽しむ3冊

selected by 安積秀幸副校長先生

おかりなもからー



前に小川洋子さんの『科学の扉をノックする』を
紹介しましたときに少し触れましたが、
私はオカリナを粘土で形を作り電気炉で焼いて自作しています。

オカリナ1

オカリナ2

自分で作ったオカリナを時々演奏して楽しんでいますが、
自作のオカリナは、12穴、10穴、4穴と3種の穴の数、
また澄んだ音を出すものから、かすれた音になっている物など、
穴の数、形、音色や音の高さも様々です。

今は22個目を作っているところです。
気に入って持ち歩いているのは最初に作った一個です。
これを超えるものがなかなかできないのです。

作り方を教えていただいた先生に話をしましたが、
「20個くらい作っただけではだめだ。
 少なくとも100個は作らないと。」と
言われてしまいました。

オカリナとぴったりと合うのは、童謡や唱歌です。
童謡・唱歌の本は歌や演奏のための楽譜の本と、
解説や説明の本という2つの分野に分かれているように思います。
童謡・唱歌の解説本も何冊か読みましたが、
そのうちの3冊を紹介します。



日本の唱歌1  日本の唱歌2

『読んで楽しい 日本の唱歌 ?・?』
中村幸弘 著(右文書院)



鯉幟の唱歌としては、
「鯉のぼり」と「こいのぼり」の2つがありますが、
「甍の波と雲の波」で始まる「鯉のぼり」は、
3番の「百瀬の滝を登りなば、忽ち龍になりぬべき」の歌詞が、
いわゆる登竜門の話です。
鯉に興味を持っていて、
この歌の作詞をされたのは誰かと調べていました。

この理由については、また別の機会に紹介したいと思っていますが、
図書館でその話をしたところ、
岩崎東里先生に教えていただいたのがこの本です。
この本では、作詞は河合酔茗、作曲は弘田龍太郎となっています。

この本を書かれた中村幸弘先生は、
大学の学長をされていますが、国語の先生をされていました。
この本を読んで、歌詞の文法の解説が多いのも、
なるほどと思ってしまいます。

2巻目にはCDもついていて、
CDを聴きながらこの本を読むのも一興です。
一つ残念なのは、解説の前に楽譜が掲載されているのですが、
少し長い歌は、楽譜が途中で切れているところです。
私たちが習った歌と違った歌詞のものが多く載っています。
とても楽しく読みました。





童謡の玉手箱

『童謡の玉手箱』
文:合田道人 絵:村上 保(神戸新聞社



この本は神戸新聞で紹介されていたのを読んで購入しました。
神戸新聞で連載されていた「童謡の玉手箱」を本にしたものです。

新聞で紹介されてから本屋さんに行ったのですが、
既に売り切れていた本屋さんもあり、
何軒かの本屋さんをはしごして購入しました。

残念ながら「鯉のぼり」は載っていなく
「こいのぼり」が紹介されています。
「やねよりたかい こいのぼり」で始まる「こいのぼり」。

歌詞には、
「おおきいまごいはおとうさん、ちいさいひごいはこどもたち」と、
お父さんと子どもたちは出てくるのですが、
お母さんは出てこないのです。
しかし、解説のタイトルは「もとは母に感謝する日」です。

このような新しい発見もできる本です。
歌によっては、現在の歌詞と戦前の歌詞の両方が紹介され、
時代の変化をうかがうこともできます。

「読んで楽しい 日本の唱歌」とは違ったほんわかとした解説で、
堅苦しくもなく、かわいらしい絵とともに楽しめる本です。




日本唱歌集


『日本唱歌集』 
堀内敬三・井上武士 著(岩波文庫



この本の解説の最初で、「唱歌」とは、
童謡、民謡等いろいろな歌の内で
幼稚園、小学校、中学校、高等学校で
教育用に使われる歌曲だと書かれています。

最初から歌詞と楽譜が並べられたこの本は、
懐かしい曲からまた全く聴いたこともない曲が紹介されています。
また、歌詞も曲も、学校で習った歌とは違った唱歌も発見できます。

たとえば、滝廉太郎の「荒城の月」ですが、
春高楼の花の宴」の「はなのえん」の
「え」の八分音符には#(シャープ)記号がついていて、
半音あげて歌うようになっています。

学校で習った時にはそのような
#(シャープ)記号はついていませんでした。
楽譜を見ながらオカリナを吹いていて発見しました。
別の本に、「山田耕作が編曲するときに取った。」とありました。

さて、「鯉のぼり」の作詞者と作曲者ですが、
文部省唱歌と書かれているだけで、名前は書かれていませんでした。
昭和33年に書かれた「まえがき」には、
現代仮名遣いに改めるために
原作者にできるだけ了解を得る作業をしたとあります。

このことから、「鯉のぼり」の作詞者、作曲者はこの時点では、
まだ分かっていなかったのではないかと思っています。
あわせて、「日本童謡集」もお勧めします。


* 「副校長の読書散歩」とは?