兵庫県播磨高等学校の取り組み「読書の学校」の模様を発信中です。

副校長の読書散歩 #12

       

第32回全国高校生読書体験コンクール受賞作品からの2冊

selected by 安積秀幸副校長先生


図1


6月12日に本校で開催された「高校生のための文化講演会」に先だって、
「読書への招待2013」という小冊子が
教員及び生徒全員の冊数で送られてきました。

全国の高校生の読書体験の受賞作が紹介されていますが、
体験談を読んで興味を持った2冊を読みました。

この冊子には、「読書感想文」ではなく「読書体験」と書かれています。
大賛成です。私は本を読むことは好きなのですが、
いつも学校から宿題として出される「読書感想文」を書くことは大嫌いでした。

小学校低学年の時だったと思いますが、
初めて読書感想文を書く宿題が出されて、
何もわからず、あらすじを書いて提出したところ、
先生から「あなたの書いたのは読書感想文ではありません。」と叱られたからです。

今ならわかるのですが、その時は「読書感想文とは?」と悩みました。
(しかし、懲りずに宿題にはあらすじを書き続けていましたが……。)

いま、このような私の読書体験を書く機会を与えていただき、
本当に楽しみながら書かせてもらっています。




49日のレシピ


四十九日のレシピ』 
伊吹有喜 著(ポプラ社



この本を選んだきっかけは、書かれた体験談が
兵庫県の高校生のものだったことです。
全国高等学校長協会賞を受賞された
「母との再会−乙母(おっか)さんへのメッセージ−」です。

前回、本を「あとがき」から読むことを書きましたが、
この読書体験記が、「四十九日のレシピ」のすばらしいあとがきであり、
また、まえがきのような気がしました。

この本を読み始める前に、
是非「母との再会−乙母(おっか)さんへのメッセージ−」を
読んでいただきたいと思います。
母を亡くした娘、妻を亡くした夫の心の通い合い。

四十九日のレシピ』には思いもよらない人物の登場があり、
話の展開に唖然としてしまうところがあります。
しかし、帯に書かれた
「家族を包むあたたかな奇跡に、涙があふれる感動の物語」を
体験いたしました。
家に帰って妻とこの話をし、元気でいてくれていることに感謝しました。





451.jpg


華氏451度』
レイ・ブラッドベリ
宇野利泰 訳(ハヤカワ文庫)



この本を読んでいるときに、
神戸の海文堂書店が店をたたむということが新聞に載りました。
あとがきは、「出版不況と『華氏451度』」というタイトルです。
2つを直結させるような捉え方はあまり好きではありません。
本を不要と考えられている社会背景を嘆くことは
わからないでもないのですが……。

この本は、本を焼く焚書官の話です。
本が不要と考えている人たちの考え方は、
「人間の思考なんて、出版業界、映画界、放送業界――
そんな社会のあやつる手のまんまにふりまわされる。
不必要なもの、時間つぶしの存在は、
遠心力ではねとばされてしまうのが運命なんだ!」
と書かれています。

一方で、その考えに反対の行動に出る一人の元教授は、
「第一に大切なのは、われわれの知識が、ものの本質をつかむこと。
第二には、それを消化するだけの閑暇をもつこと。
第三には、最初の両者の相互作用から学びとったものに基礎をおいて、
正しい行動に出ることにある。」と言います。

私はこの二つの言葉から、
「それを消化するだけの閑暇をもつこと」
が本当に大切だと感じています。
もっとも「閑暇をもつこと」は
生活の中の行動と行動の区切り目にできる
ほんの短い時間でもできると、
私は思っています。

しかし、主人公モンターグの上官は、
本を読むことの大切さに目覚めたモンターグに
いろいろな本に書かれた文を引用して反論するのですが、
上官は本当に本をよく読んでいますよね? ……?

*全国高校生読書体験記コンクールの入賞作品は、
「一ツ橋文芸教育振興会の読書推進活動」
というインターネットのページから読むことができます。



* 「副校長の読書散歩」とは?